「長生きしたい。できることならば、元気で美しく年を重ねたい」――それはすべての女性共通の願いだろう。各界を見渡せば80才を超えても、若い頃より一層魅力を増して活躍している女性がいる。
「座右の銘は、『食は命、命は食にあり』です。女子栄養大学の恩師、香川綾先生(女子栄養大学の創設者。1997年に98才で他界)からいただいたお言葉です。私自身も、『おいしく食べて、健康長寿』を掲げて食の大切さをお伝えしています」
そう語るのは、バラエティー番組『料理の鉄人』で「おいしゅうございます」のひとことが印象的だった岸朝子さんだ。料理記者歴は60年。91才の現在も、取材を続けている。
「とはいっても、ややこしいことはあんまり考えないの。なにより大切なのは、好き嫌いをせずに、なんでもおいしくいただくこと。私自身、幼い頃からそう厳しくしつけられてきましたし、岸家は全員好き嫌いがありません。4才半になるひ孫も、なんでも食べますよ。
子供のうちに、きちんとした食べ方を教えておくことが大事。おかげさまで私からひ孫まで、誰ひとり大病をせず過ごしています」
岸さんの一日は手作りの特製フルーツジュースで始まる。
「芯を抜いたリンゴと、皮の部分をむいた黄色のグレープフルーツをミキサーにかけるんです。食物繊維たっぷりでおいしいわよ。桃やマンゴーで作る日もあります。
お昼には手作りの油味噌をよくいただきます。『アンダンスー』という沖縄の保存食で、茹でた豚三枚肉に砂糖やお酒、お味噌を加えて練り上げたもの。両親が沖縄出身なので、岸家の味として子供たちに食べさせました。うちではお正月のお雑煮も沖縄風。ソーキのおつゆにお餅を入れていただくんですよ」
夕食になると、同居する料理上手な三女が台所に立つ。
「香川先生の教えに倣い、『魚1・豆1・野菜5』のバランスを考えた食事を心がけています。お魚は旬のものを煮たり、焼いたり。最近は、ひ孫といただいたうなぎがおいしかったわね。100才まで元気に、おいしく、人生を謳歌したいと思っています」
美食家として知られる岸さんは、お酒やたばこなども、大いに楽しんでいる。
「お酒を飲むときは1合くらい。たばこは毎日1箱以上吸いますよ。これといった運動もしないけれど、健康診断でどこも悪いところがない。
『嫌なことは夜、布団の中で考えないこと。太陽の下で考えれば、何事も明るくなる』というのも香川先生の教えですが、ストレスを溜めないで、なんでもおいしくいただく。私の健康の秘訣は、これに尽きますね」
※女性セブン2015年1月8・15日号