保険証もお金もなく、病気になっても病院に行けない人が増えている。そんな人に頼りになるのが社会福祉法で定められた「無料低額診療施設」だ。その存在を知らない人も多いだろう。コラムニストのオバタカズユキ氏が説明する。
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この年末年始は日の並びがよくて、九連休を満喫中のサラリーマンも多いとか。一部の業界の大手企業はボーナスもよく、ガソリンの価格も低下している。ということで、国内旅行が賑わっているらしい。
たとえ一部であれ、街角景気や消費者態度の活性化は喜ばしい話なのだが、その一部に該当しないと苛立ちが増す状況でもあって、冬のボーナスなんか出なかったし、正月休みなんかロクにとれないし、という人がフェイスブックを覗くたびにリアル充実写真ばかりを見せつけられたりすると、どうしたってフザケンナという気持ちが湧いてしまうものである。
一年の中でもクリスマスから正月休みにかけては、階層社会ニッポンの現実が残酷なまでにあらわとなる期間なのだ。
でも、そうやってフザケンナ、と悪態をついているうちはまだ大丈夫。危惧するのは、階層社会の底辺で疲れ果て、他人をうらやむ気力もなくなっている人々が増えているのではないかという問題である。
たとえば、国民健康保険の滞納率は増加している。最新データが2012年のものしかないのだが(こういう大事な統計はもっと迅速に公表してくれ厚労省)、全国の滞納率は18.1%、東京都だと24.1%が支払いを滞らせているそうだ。
そのうちの多くは金がないから保険料を払えない。長いことそうしているうちに保険証を没収され、事実上の無保険者になってしまっている人もいる。国民皆保険は日本が誇るべき制度だけど、実際は皆が皆その恩恵を受けているわけではないのである。
で、そういう無保険者や、手持ちの金がほとんどない人が、体調を壊してしまうとどうなるか。病院にいけず、より体調不良をこじらせ、ますますまともに働けなくなって、貧困の渦の中へ一気に巻きこまれるのだ。
これ、ヒトゴトではないと思う。私のような自営業者はいつも身近な問題だし、安定したお勤めの人であっても、何かのアクシデントで心の病気のひとつでもやらかせば、簡単に堕ちていくものなのである。
だから、もしも無保険者になったとき、それでも医療を受けられる方法があるのだということは知っておいて損がない。ていうか、まわりにそんな人がもしいたら、是非ともその方法を伝えてほしい。リア充たちが満喫した日々を送っている正月休みであるからこそ、だ。
具体的には、「無料低額診療施設」と「(当事者が住んでいる都道府県の名称)」のアンド検索をかけるところからだ。そうすると、保険証やお金がなくても診療を受けつける医療機関の一覧表が、なにかしら出てくる。
それらの医療は、社会的正義感の強い医師や看護師などがボランティア精神を発揮してやっている、のではなく、社会福祉法が<生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業>と定めたものだ。「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者がもっと困難なことにならないよう、国や医師会も「無料低額診療施設」の利用を薦めているのである。
ただ、地域によっては、この制度を利用したくても、実際にどこの病院へ行けばいいのか、調べがめんどくさい。
ためしに、「無料低額診療施設」と「東京都」をアンド検索すると、検索結果画面のトップに、東京都福祉保健局の「施設等一覧(本編)」が表示されるはずだ。そのページを開いてみると、なにやらいろんな施設のジャンル名がずらずら並び、「無料低額診療施設」が「その他の社会福祉施設等」の中に括られていて見つけにくい。
しかも、「その他の社会福祉施設等」はクリッカブルになっているのだが、クリックして飛び出してくるのはエクセルだ。そのエクセルの中には、「授産施設(授産場)」「宿泊所」などと並んで「無料低額診療施設」のタブがあり、そこをさらにクリックしないと、探し物は出てこない。