ちょうど2年前、安倍晋三首相は「業績が改善している企業には報酬の引き上げをお願いしていく」と表明し、それに呼応して最初に賃上げ方針を表明したのが政府の産業競争力会議の委員を務めるローソンの新浪剛史・社長(当時。現サントリー社長)だった。
同社は子会社を含めた20代後半から49歳までの子育て世代の社員約3300人にボーナスを上乗せし、年収を平均3%(約15万円)引き上げると発表。感激した安倍首相は電話でお礼を述べ、官邸のホームページに社名を載せることで、いわば“アベノミクス賃上げ賛同企業”として表彰した。
ところが、である。ローソン社員の平均年収を見ると2012年度の649万円から2013年度は636万円へと13万円減った。過去最高益で社員数や平均年齢に大きな変化もないことから、業績悪化や早期退職、新卒大量採用で下がったとは考えにくい。いったい、あの「15万円アップ」はどこに消えたのだろうか。
ローソンは「原因は業績連動給の減少と、臨時ボーナスがなかったことです。最高益でも計画は達成できなかった。3%賃上げ目標が達成できたかどうかに答えるのは難しい」(広報担当)と説明する。「賃上げ表彰」は官邸のヤラセだったのだろうか。
●協力/東京商工リサーチ
※週刊ポスト2015年1月16・23日号