本誌はアベノミクスの効果を調べるため、「東京商工リサーチ」の全面協力で2013年度の全上場企業(3502社)の平均年収データを入手し、企業ごとに社員の平均年収が2012年度からどのくらい増減したかを比較した。円安による原材料費の上昇や消費の落ち込みに直面しているアベノミクス不況業種は社員もさらに苦しい。
その代表が小売・外食産業だ。最大手のイオンの平均年収が54万円下がったのをはじめ、「ブラック企業」批判が上がったワタミは55万円、「すき家」を経営するゼンショーホールディングスは94万円下がった。
年収ランキング下位には、「低賃金」で知られる介護業界も多い。
政府は介護人材の確保のために2009年から介護保険の報酬を引き上げ、さらに賃上げのための交付金として施設に税金4000億円を投入してきた。その結果、介護職員の給料は月額3万円押し上げられた計算になる。大阪の介護大手、ケア21の平均年収は337万円から360万円に上がった。
それに対して、介護最大手のニチイ学館(社員数約1万4000人)の平均年収をみると、349万円から339万円に10万円も下がっている。ニチイ学館は、「昨年度の平均年収が減少した理由は、業務の見直しを行ない、全社的に残業代が減ったためです」と回答した。国民の負担で介護職員の賃上げを行なう国策さえ、実際には職員の手までカネは届いていないのだ。
※週刊ポスト2015年1月16・23日号