どんな名選手でも苦手がいる。通算400勝の金田正一氏、350勝の米田哲也氏、320勝小山正明氏、あわせて1070勝の3人にも苦手な打者がいた。日本球史上で勝利数トップ3の3人が、それぞれの苦手打者との思い出について語りあった。
──苦手だった打者はいますか?
小山:大洋の近藤和彦かな。バットを担いで構える天秤打法で、どんな球にも食らいついてきた。カットもうまくて2ストライクからも平気でヒットを打ってきた。
米田:僕は榎本喜八さん(毎日)です。追い込んでからもうまくコツンと当てて内野と外野の間に落とす。打った後に一塁ベースから「どうもありがとう」と声をかけてくる変わった人でした(笑い)。
小山:カネさんはヨッさん(吉田義男)やね。
金田:あのチビな(笑い)。ワシの球はグイッと伸びて浮き上がるからチビだとストライクにならん。それに打席でさらに屈むからストライクゾーンなんかありゃせん。真っ直ぐはボールになるからカーブしか投げられんのだが、それを待ってうまく打つ(*注)。サヨナラヒットも何本打たれたか。
【*注】吉田氏は通算打率.267、66本塁打ながら、金田氏との対戦は通算.310、8本塁打。
※週刊ポスト2015年1月16・23日号