年功序列の賃金体系を守ってきた重厚長大の電機業界では、賃金体系の見直しの大きな動きが起きた。昨年9月、日立製作所が約1万1000人の管理職全員を対象に、全面的に能力給を導入すると発表し、ソニーやパナソニックも2015年度から給与体系の見直しに着手する。商社のような入社年次を超えた熾烈な出世競争が他業界でも激しさを増していくことになる。
この動きには、有能な若手社員や外国人にチャンスを与え人材発掘を進めるというポジティブな側面の一方で、会社側の都合も見え隠れする。経済ジャーナリストの溝上憲文氏がいう。
「これらの重厚長大の電機企業は、どこも社員の高齢化に悩んでいる。旧来の年功序列的な給与体系を維持していけば、管理職が増え、人件費の負担も増大し、それを下支えするために、どんどん若い世代の負担が増していく。
しかし、給与基準を勤続年数ではなく職務や役割に変えれば、組織構成の逆ピラミッド化を防ぐことができ、会社としても人件費の高騰を抑えることができる。
近年進んでいる給与体系の変更は、“成果主義は是か非か”という短絡的な視点ではなく、企業側の人件費コントロールという側面でも捉えるべきでしょう」
※週刊ポスト2015年1月16・23日号