2014年、安倍内閣は憲法解釈を変更し、集団的自衛権を行使できると閣議決定した。このことは同盟関係にあるアメリカ側からはどう評価されるのか、アメリカ民主党政権で安全保障関係の要職を務め、知日派としても知られるハーバード大学特別功労教授のジョセフ・ナイ氏に聞いた。
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安全保障という観点から見ると、日本は極めて危険な地域に位置している。最も顕著なのが、何をやるか予測し難い独裁国家・北朝鮮の存在だ。北朝鮮は貧しい国だが、その乏しい国家予算から核兵器とミサイル開発にカネを注ぎ込んでいる。
また、長期的にみれば、中国の台頭がある。尖閣諸島をめぐって日本の主権を認めず、紛争を起こしている人口13億の国家だ。北には日本固有の北方領土について未だに主権を主張するロシアがいる。さらに、日本は南シナ海のシーレーンを経由する貿易に頼っている。
そうした不安定なアジア地域で日本が集団的自衛権を行使すること(国連憲章は日本にその権利があることを認めている)は理に適ったことだ。
むしろ私が問題視するのは、この穏健な変更措置に纏わりつく日本のナショナリスト的なレトリックと言動だ。安倍晋三首相は、慰安婦問題に関する『河野談話』の見直しとか靖国神社参拝といった問題をナショナリズムという一つのパッケージに包み込んで、隣国や同盟国の不信感を増長させている。これが国内政治にどれほど役立つかどうかはともかくとして、外交という見地からすると非生産的である。
19世紀以降、日本はユニークな伝統文化の魅力を継承しつつ、グローバリゼーションを取り入れてきた。快適で、安全で、平和的な民主社会を創り上げてきた。日本人は自国を誇りに思うべきだし、世界により寄与することが出来る。
日本が再び経済成長力を取り戻し、女性の役割を増大させることで(男女雇用均等問題に)真正面から取り組み、国際的な役割を強化していただくよう祈念したい。
●取材・構成/高濱賛(在米ジャーナリスト)
※SAPIO2015年2月号