「チョコレートは大好きだけど、メタボが怖いのよね」
「そうそう、メタボになると、高血圧とか脳や心臓の病気とか、いろいろ心配だしね…」
なんて思っているかた、ちょっと待った!
最近、「チョコレートを食べると健康になる」という、女性にとってうれしい研究結果が発表された。ただし、どんなチョコレートでもよい、というわけではない。「“ある”種類のチョコレートを適量」がポイント。その食べ方を守れば、太る心配もないことも確認されている。そのチョコとは?
今回、チョコレートを使った研究を行ったのは、愛知学院大学の教授で、さまざまな食品の健康成分、なかでもポリフェノールにくわしい大澤俊彦さん。
「ポリフェノールとは、植物の表皮や種子などに多く含まれる成分です。有名なものに、緑茶のカテキン、赤ワインのレスベラトロール、コーヒーのクロロゲン酸、大豆のイソフラボンなどがあります。なかでも、チョコレートには、カカオポリフェノールが非常に多く含まれているんです」
食品100g(飲料は100ml)中のポリフェノール含有量を比べたところ、コーヒー89.5mg、玉ねぎ90 mg、紅茶100 mg、赤ワイン180 mg、りんご220 mg、高カカオチョコレート840 mgと、高カカオチョコレートにはポリフェノールが非常に豊富なことがわかった。(「食品100g中のポリフェノール含有量」Scalbert A and Williamson G. THE JOURNAL OF NEUTRITION 2000より)
「カカオポリフェノールには、体を老化させる活性酸素を抑える、生活習慣病の予防に有効であるなどの報告が多数あります。そこで、一般のかたに、毎日“ある”チョコレートを食べてもらい、健康にどんな影響があるか調べることにしたのです」(大澤さん)
大澤さんらの研究グループは、愛知県蒲郡市で45~69才の一般の市民347名にカカオポリフェノール70%以上のチョコレートを毎日25g食べ続けてもらい、その前後に血圧や体重、血液など、さまざまな項目を測定した。
すると、高血圧(収縮期血圧140mmHgあるいは拡張期血圧90mmHg以上)の人は-5.86、正常血圧の人は-1.62と、高血圧の人は正常血圧の人に比べ、大きく血圧が低下した。
「4週間で、血圧が明らかに下がりました。とくに、血圧が高めのかたに対して、よりはっきり効果が出たのです。また、善玉コレステロールの量も増えていることがわかりました。
カカオポリフェノールには、血管を広げる物質の産生量を高めるはたらきがあります。しかし、これほど短い期間で、血圧にまでよい影響が出るとは予想していなかったので、私自身も非常に驚いているんです」(大澤さん)
今回の試験にあたって大澤さんがとくに注意したのが、チョコレートの選び方と食べる量。
「チョコレートの主成分であるカカオの量が多いほど、カカオポリフェノールもたくさん摂取できますが、その分苦みも強くなります。そこで今回の実験では、カカオ分が72%のチョコレートを使用しました。70%前後のものなら、ポリフェノールも充分に摂れますし、苦みもほどほどでおいしく食べられるからです。
食べる量は毎日25g。一般的な板チョコの4分の1ほどの量で、約140kcal程度です。この程度のエネルギー量ならおやつとしても適量ですし、毎日の食事にプラスしても悪影響がないと考えたのです」(大澤さん)
試験の前後に、被験者全員の体重やBMI(ヒトの肥満度を示す体格指数)を測ったところ、とくに変化は認められなかった。
「ただし、チョコレートには脂肪分や糖分も含まれていますから、カカオポリフェノールが体によくても食べすぎは禁物です。2~3日に1度でもよいので、少量ずつ定期的に食べるのがよいでしょう。コーヒーや赤ワインなど、ポリフェノールを含むものと一緒に楽しむのもおすすめです」(大澤さん)
ほかにも“チョコがいい”理由がある。『カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン』(佐藤清隆・古谷野哲夫著、幸書房)によると、古代中央アメリカの人々は、カカオに栄養効果や薬理効果があることを発見。砕いたカカオを使った飲料や酒を「不老長寿の飲み物」として愛飲していた。また、カカオポリフェノールを食べたラットは、食べていないラットに比べ、ストレスを受けたときに感じるホルモンの分泌量が少ないことがわかっているという。
大澤さんらの実験で、被験者にアンケート調査を行ったところ、チョコレートを食べていた期間は「活力にあふれ、精神的に活発になった」という結果も。
もうすぐバレンタイン。今年は高カカオチョコを選んで、健康を一緒にプレゼントするのもよいのでは?
※女性セブン2015年1月29日号