このところ相次いでいる食品への異物混入報道。だが、何をもって異物とするのかについては判然としないところがある。食品衛生法は第6条4項で「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」の製造販売を禁止している。だが、何が「異物」にあたるかは明確ではない。
「人体に危害を加えるボツリヌス菌などは『健康を損なうおそれ』が明確なためすぐに公表する。しかし、ビニール片などが法律の禁じる異物にあたるかは微妙。何が異物かを判断するガイドラインはなく、明確な健康被害が確認できなければ、公表や回収の判断は自治体や企業に委ねている」(同法所管の厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課)
国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)が各国に推奨する衛生管理方式「HACCP」の分類では、異物は毛髪・歯など身体の一部、虫やその排泄物などの「動物性異物」、植物片や紙類、ゴム片などの「植物性異物」、金属片やガラス片などの「鉱物性異物」の3種類に大別される。
そのうち、最も危険なのは「鉱物性異物」だ。口内や喉を傷める危険があり、とくに小さな子供だと被害が重傷化しかねない。一方で「動物性異物」は人体への影響が少なくとも、消費者を不快にして感情的な反発を招きやすい。ゴキブリは最たる例だ。
訴訟大国のアメリカの基準は興味深い。米食品医薬品局の定めでは、ピーナッツバター100グラムあたり齧歯(げっし)動物の体毛1本までなら責任を問われない。缶詰トマトでは1缶あたりミバエの卵5個とウジ1匹まで、ウジだけなら2匹まで許容される。「食品に虫は混入するもの」という前提のもと線引きしているのだ。
※週刊ポスト2015年1月30日号