厚生労働省の発表によると、日本人の29.8%、つまり4人に1人以上が花粉症だ。これからの花粉シーズンをどう乗り切るかは、多くの人にとって重要な問題だ。
今年のスギ花粉の飛散は例年よりやや早く2月上旬から始まり、ピークは例年通り3月上旬から中旬。飛散量は東日本を中心にかなり多く、北陸・関東甲信・東北地方では昨年の2~3倍という(日本気象協会『2015年春の花粉飛散予測(第3報)』より)。つまり、昨年より多くの花粉を長い期間浴びるというわけだ。
そんな花粉の猛威に備えるべく、今、注目されているのが「菌活」だ。なぜ菌活が花粉症に効くのか。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎さんが説明する。
「菌活で腸内環境を整えれば、花粉症を抑えられます。花粉症は、腸内細菌のバランスの乱れによって起きます。人間の腸内には約3万種類、約1000兆個もの腸内細菌が存在し、免疫力の約7割をつかさどっているといわれています。
免疫細胞には、がん細胞などを攻撃するTh1細胞と、アレルギーを抑えるTh2細胞があります。アレルギーの原因となる物質が体内に侵入した際、Th2細胞の働きでIgE抗体がつくられ、攻撃を開始します。
本来、花粉は体に害がないものですが、食生活の乱れやストレスなどによって免疫細胞のバランスが崩れ、Th1細胞よりTh2細胞の方が増えてしまうと、IgE抗体が過剰に反応し、体内に侵入してきた花粉を攻撃するようになる。これが花粉症を引き起こすしくみです」(藤田さん)
腸内細菌は大きく分けて、 善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌の3つに分けられる。
「悪玉菌が増えると、Th2細胞が増えてしまいます。反対に善玉菌を増やせば、Th1細胞とTh2細胞の均衡がとれ、花粉症は抑えられる。日和見菌は優位な方に加担する菌ですから、菌活をして腸内の善玉菌を増やして日和見菌を味方につけ、バランスを“善”に傾けることが大切なのです」(藤田さん)
腸内の善玉菌を増やすには、善玉菌を取り入れることが必要だ。代表的な善玉菌としては、乳酸菌が広く知られている。シロタ株やL–92乳酸菌など、特定の乳酸菌が花粉症に効くと思われがちだが、医学博士で管理栄養士の本多京子さんは「どんな乳酸菌でも効果はあります」と話す。
「大事なのは、毎日摂取するように心がけること。口から摂取した菌は、体内に留まっていられるのはせいぜい3日程度、腸内に定着できないのです。毎日摂ることを考えると、ヨーグルトなどがおすすめです。
植物性乳酸菌が豊富なキムチは塩分に気をつけながら摂取するといいですね」(本多さん)
ヨーグルトの場合、摂取の目安は、1日100~200g程度だ。最近は乳酸菌を生きたまま腸まで届けるという、プロバイオティクスヨーグルトが人気だが、これも毎日継続して摂り続けることが重要だ。
「熱に強いフェカリス菌や、胃酸に強いKW乳酸菌、ピロリ菌抑制効果のあるLG21乳酸菌など、実験データを参考に選ぶのもよいですし、毎日のことですから、ヨーグルトの味で選ぶのもよいでしょう。
自分に合う乳酸菌は人それぞれですから、まずは1週間同じヨーグルトを食べ続けてみてください。肌の調子やお通じの様子を目安に、効果がないと思ったら、別のヨーグルトに変えてみるといいですよ」(本多さん)
※女性セブン2015年2月5日号