1月14日、国内3例目となる6歳未満児童からの脳死臓器移植手術が行なわれた。ドナー(臓器提供者)となった4歳女児は難病に苦しみ、心臓移植を待つ身だった。1月26日発売の週刊ポスト(2月6日号)で、女児の両親がノンフィクションライター・柳川悠二氏のインタビューに応じ、彼女が脳死を宣告されるまでの経緯と、我が子をドナーにするという重い決断について語っている。
1月13日に大阪大学医学部付属病院で脳死と判定された清水望ちゃん(仮名、以下同)は、15歳未満の臓器提供が認められるようになった2010年の改正臓器移植法の施行以来、6歳未満としては国内3人目のドナーとなった。彼女の小さな肺、肝臓、二つの腎臓が関西圏の患者に受け継がれた。
望ちゃんは昨年、難病である特発性拡張型心筋症(心室の筋肉の収縮が悪くなり、心臓が拡張してしまう病)と診断された。補助人工心臓を装着して心臓移植の機会を待つしか助かる道はないとされた。
しかし、望ちゃんに取り付けられる人工心臓は簡易型しかなかった。簡易型では脳梗塞を引き起こす可能性が極めて高くなる。ドイツには小児用人工心臓があったが、日本では未認可だった。母・紀子さん(38)、父・哲寛さん(34)は、特例的にこの小児用人工心臓を認めてもらえないかと塩崎恭久・厚労相らに働きかけたが叶わぬうちに、望ちゃんの容体は急変した。
望ちゃんが脳死と診断され、哲寛さんらは言葉を失った。ようやく口を開いた時、出てきた言葉は自分でも意外なものだったという。
「先生、心臓以外の臓器が元気なら、使ってもらえませんでしょうか」
哲寛さんは、この時の心境について同誌にこう語っている。
「子供の死は、自分たちが死ぬ以上に恐ろしいことでした。僕らはずっと移植の機会を待っていた。娘が生き返る可能性がないと理解した後、臓器が提供できる状態なら提供すべきと自然に思いました。娘ひとりの命は失っても、その代わりの人の命が助かるかもしれないのですから」
レシピエントとドナーの感情を理解した上で臓器提供を決断した夫妻の告白は、愛する人の脳死に直面した際の道標になるだろう。