大手書店の新刊コーナーに700ページ超の大著で経済の専門書が、ずらりと平積みされた。『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著、山形浩生・他訳、みすず書房刊)である。2013年8月に原著のフランス語版が発売、翌年4月に英語版が発売され、世界35か国で翻訳されるベストセラーがついに日本にも登場したのだ。訳者・山形氏の協力のもと、読者が知りたいであろう「本書の一番の ポイント」について紹介する。
【A】歴史的に見て資本家などの富裕層と一般の労働者の間にはつねに経済格差があり、今後もその傾向が続く、というのが最大の主張。そこでポイントとなるのが、カバーにも書かれている「r>g」という定理です。rは「資本収益率」で、不動産や株式、債券などあらゆる「資産」から生まれる収益の率のこと。
一方、gは「経済成長率」、つまり労働によって得られる所得の増加率のこと。「r>g」ということは、「資本収益率rは経済成長率gより高い」ことを意味します。その定理が成り立つとき、資本家と労働者の経済格差は拡大します。そのことを押さえておけば、この本の内容はだいたい理解できます。
ピケティは、紀元0年から現在までの資本収益率rと経済成長率gを推測し、2100年までのrとgを予測しています。それによると、rが一貫して4%台から5%台であるのに対し、gは20世紀後半には3.5%~4%に達しましたが、歴史的に見るとそれは例外で、ほとんどの期間は2%未満です。つまり、金持ちはますます富み、貧しき者はますます貧しくなるということです。
※SAPIO2015年2月号