イスラム国による邦人拘束事件における人質交渉では、政府は情報収集も交渉も外国を頼り、イスラム国に翻弄され続けた。
鳴り物入りで発足した国家安全保障局(日本版NSC)にも情報がなかった。最初の動画公開時に設定された72時間の人質殺害の期限が迫る中、安倍晋三首相は公邸に泊まり込んで交渉進展を待ったが、外務省の現場職員からは悲鳴があがっていた。
「上からは情報を出せと矢の催促だが、報告する情報がない。国家安全保障局の会議を開いても、報告事項がないからそのままでは1分で終わってしまう。どうやって場を持たせるか頭が痛かった」
菅義偉官房長官が25日未明に行なわれた緊急会見で、殺害された人質・湯川遥菜氏の名前を「ハルナユタカ」と言い間違える大失態を演じたのも“やったフリ”の会議だったからではなかったか。中身のある会議が行なわれていたのなら、「ユカワハルナ」という言葉が直前まで頻繁に飛び交っていたはずであり、博覧強記と評される菅氏が名前を間違えるとは思えない。
※週刊ポスト2015年2月13日号