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小さな町の閉塞感を描いたマンガ『さよならガールフレンド』

【マンガ紹介】『さよならガールフレンド』(全1巻)高野雀/祥伝社/734円

 北関東に住んでいた高校生の頃、自分の暮らす町では買えない本やレコードに憧れをつのらせたものでした。駅は遠く、町は小さく、自転車では行ける場所も限られていて、とにかくそこでは何もできない(ような気が当時はしたんですね)。

 高野雀の短編集『さよならガールフレンド』を読みはじめてすぐに「ああ、このヒリヒリするような退屈さを私は知っている」と思いました。表題作の舞台は学校とコンビニと工場しかない小さな町。主人公は何もかもにうんざりしている高校3年生です。楽しいのは、彼氏の浮気相手だったヤンキーのビッチ先輩と話している時だけ。

 リアルな閉塞感で冒頭から読者をグイグイ引きつける作品ですが、最大の魅力は「先輩の目元はすごく立派に盛られてて/まあクラッときてもしょうがないかなとか」とクールに語られるビッチ先輩と主人公の関係です。先輩を「ひっそりずっと好きでいる」気持ちは世界へのささやかな希望の証のよう。切ないラストシーンが胸に迫ります。

 恋心の終わりを解剖した『面影サンセット』。「わたしには『女の子』の資格がない/だから愛されなくてもしょうがない」と思っているメガネ女子が主人公の『まぼろしチアノーゼ』。どの収録作でも、ひそやかな心の内の描写は実に鮮やか。共感を呼ぶだけに留まらない語り口も見事です。

 本書は高野雀のデビュー単行本。創作同人誌の即売会「コミティア」から登場した注目の新鋭です。ギザギザした感情が描かれているのに、読んだ後心に残るのは沁みるような温かさ。このバランス感覚、ただ者じゃありません。

文/横井周子

※女性セブン2015年2月12日号

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