習近平・中国国家主席は1月12日、北京で行われた第18期中央規律検査委員会第5回総会で、腐敗撲滅キャンペーンを継続する方針を明確に打ち出した。ジャーナリスト・相馬勝氏がレポートする。
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腐敗撲滅について、新たな情報が入った。胡錦濤前国家主席の側近で失脚した令計画一族の権力基盤である山西省の李小鵬・省長が、担当していた腐敗捜査関連部門の監察や会計検査、それに国有資産管理の権限を剥奪されたのだ。省長の権限削減は改革・開放路線導入以来初めてとみられる。
それは取りも直さず、李氏や李氏の父親である李鵬・元首相ら「電力閥」が新たな腐敗撲滅のターゲットであり、さらに江沢民一族をも巻き込んだ奪権闘争に発展する可能性を秘めているからだ。
李小鵬氏といえば、父の李鵬氏同様、大学卒業後、電力技師の道を歩み、中国の国有電力会社大手、華能電力集団の会長まで上り詰めたものの、2008年に政界に転じた。
しかも、その行政手腕が未知数にもかかわらず、山西省の副省長という異例の抜擢で、「最高幹部だった父親の七光り」と陰口を叩かれた。2012年11月の党中央委総会で党中央候補委員に選出されたが、最下位での当選だったことからも、その不人気ぶりが分かろうというもの。
父親の李鵬氏は首相時代、世界有数規模の三峡ダム建設を陣頭指揮し、ダムの建設・管理費用を賄う1374億元(約2兆6100億円)ものダム基金の大半を私物化したなどの不正疑惑が囁かれているが、息子の李小鵬氏も黒いうわさが多い。例えば、李氏は昨年4月、「重大な党規律違反」の疑いで身柄を拘束された、国有企業最大手のコングロマリット、華潤集団の宋林・元会長と極めて親しい関係にあったことは知る人ぞ知る話だ。
北京の中国人ジャーナリストは今後の展開を次のように予測する。
「宋林が取り調べを受けた時点で、李小鵬の身も危ないとの情報が駆け巡った。宋林が身柄を拘束されて、もうすぐ1年が経つ。李元首相の息子が関わっているだけに、規律検査委も慎重に容疑を固めているのだろうが、そろそろ宋林が起訴されてもおかしくない。そうなれば、李小鵬も無事とはいえないだろう」
李氏は2013年1月、山西省長に選出され、令計画氏ら山西閥が軒並み狙い撃ちされるなか、いまだに現職だが、「すでに外堀は埋められている」(このジャーナリスト)ようだ。
※SAPIO2015年3月号