『ひるおび!』(TBS系)や『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)などでコメンテーターとしても活躍する、ジャーナリストの大谷昭宏さん(69才)が、母の葬儀、そして自らの病について語る。その話は、自身の葬式にも及んだ。
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おふくろが逝ったのは、2009年10月だった。女性として妻として、そして母親として、すべてやり遂げた。死に顔は実に堂々としたものだった。
『まさに大往生でした』
年賀の欠礼の挨拶状にそう認めた。
墓のある世田谷区内の寺で執り行われた密葬の参列者は、20人ほどだった。訃報を親族以外に伝えていなかったので、供花もぼくたち兄弟のものだけ。父の葬儀も含め、これまでの経験から葬式が大きくなり、弔問客がたくさん来れば来るほど、お客さんに対していき届かなかったのではと後悔が残るものだ。
結婚式は「今度上手くやるから」とでもいえば、笑ってすまされるが、葬式の場合、「次は上手くやる」などという冗談は通用しない。ごく内輪で執り行ったおふくろの葬式は、一切後悔が残らない清々しいものであった。
ぼくが肝内胆管がんと宣告されたのは、昨年の夏である。幸い早期のがんだった。死が身近に迫った体験ではあったが、ぼくの葬式への思いは以前と変わらない。
ぼくもおふくろの時のように密葬でいく。間違っても偲ぶ会とかはやってくれるな。会に参列する人間を選ぶだけで、必ずややっこしいことになるし、カネもかかる。
ぼくの願いは些細なことだ。これまで3代の歴代の犬のお骨は残してあるので、犬と一緒の墓に入りたい。
「とんでもない、犬といえば悪業の報いとして、その姿を変える畜生道の象徴のようなもので、人間と犬を一緒にお参りするなんてできません」
相談したお坊さんにはけんもほろろに断られた。それなら自分で探そうと今、ペットと入れる墓を探している。
ぼくには子供がいないので、後は妻にすべて委ねることになる。ぼくは向こうの世界で先に逝ったワンちゃんたちと、楽しくのんびりとやるつもりだ。いずれ妻もその中に加わるだろう。
ぼくが逝ったら後日、挨拶状に墓の場所を記しておく。墓にはウイスキーを置いておくから後は勝手にやってくれ。ウイスキーグラスを片手にたばこをくゆらせ、語り明かしてくれればそれでいい。それがぼくにとっては最高の供養である。
聞き手・文/根岸康雄
※女性セブン2015年2月19日号