史上最凶のテロ集団ともいわれる「イスラム国」は、日本人の思考や感情、常識からはかけ離れた“土壌”で生まれ、手の付けられないモンスターと化した。
日本に刃が向けられた今、私たちが自らの安全を守るためにも、知っておくべき事柄をまとめた。
イスラム国の統治の基本は“恐怖政治”である。例えば、公共の広場を鉄の板で覆い、公開処刑が実行されるときだけ、市民を招き入れているという。
一方で、「首都」に位置づけられるラッカでは、防衛省や保健省などの省庁が設置され、既存施設を利用した行政サービスも徐々に整備されている。銀行や発電所、礼拝所、商店も「国」が運営。貧困層や母子家庭には援助もあり、逆に富裕層には「イスラム税」を課しているという。
その行き着く先はどこか。
「名称に『イラクと大シリアのイスラム国』とあるように、オスマン帝国時代のシリア州、すなわちイスラエル、パレスチナ、ヨルダン、レバノンにまで支配地域を広げることが目標と考えられます」(千葉大学・酒井啓子教授)
イスラム国が次のターゲットとして狙っているのが、「大シリア」の範疇で軍事力が貧弱なヨルダンだといわれる。
「安倍首相が中東訪問でヨルダンに支援を約束したのは、そのためです」(酒井氏)
ヨルダン支援の声明にイスラム国がカウンターで当ててきたのが、あの日本人の人質殺害予告だったということだ。では、今後、イスラム国は日本に何を仕掛けてくるのか。
「日本の世論がテロに動揺して、政府批判が巻き起こるようなら、テロに効果ありと判断して、さらにテロを繰り返すでしょう」(元在シリア特命全権大使・国枝昌樹氏)
※SAPIO2015年3月号