福岡県豊前市で小学5年生の少女・石橋美羽さんが殺害された事件で、少女の同級生の母親の内縁の夫・内間俊幸容疑者(46)が逮捕された。内間容疑者には、連続婦女暴行で逮捕、起訴され、実刑判決を受けた過去があった。
その内間容疑者の今回の逮捕容疑は死体遺棄。捜査関係者は、「被害者遺族の心情にも配慮しながら、今後、強姦殺人での再逮捕も視野に入れ、慎重に捜査している」と話す。内間容疑者に限らず、性犯罪者の再犯は社会問題となっている。
同じ犯罪を繰り返す「同種重大再犯率」の割合は、殺人の0.8%、傷害致死3.9%、放火の7.5%、強盗の8.3%に比べ、強姦は9.4%と高い(2010年『犯罪白書』)。2004年の奈良小1女児誘拐殺害事件や2005年の広島小5女児殺害事件でも、容疑者には性犯罪の前科があった。
近年ではそうした再犯による性犯罪被害を防ごうと、“監視”を検討する自治体がある。大阪府では2012年10月に18歳未満の子供への性犯罪前科者には住所の届け出を義務づけた。宮城県では、前科者に対するGPS端末の常時携帯義務を条例化しようという動きがあったが、震災による人材・財源不足で頓挫した。
今回の事件が起きた福岡県豊前市の後藤元秀市長は、美羽さんの通夜が営まれた2月2日、自身のフェイスブックで内間容疑者の前科を明かした上で、〈こんな性犯罪を繰り返す人間は、警察や関係機関の監視下に置くべきではないか。普通の市民社会に『放置』するのを許すなら、この種の犯罪はなくならないだろう〉と問題提起した。犯罪心理学が専門の桐生正幸・東洋大学教授が語る。
「アメリカでは、州によって温度差はありますが、ミーガン法と呼ばれる性犯罪者情報公開制度があります。前科者の情報を一般公開するというもので、住民がその情報にアクセスできるようになっています」
しかし、性犯罪前科者の監視に問題点を指摘する専門家もいる。
「潜在的な被害者に注意喚起するという意味では、性犯罪を未然に防ぐ一定の効果が期待されます。しかし、過度の監視により、前科者の住む場所がなくなるなど、社会復帰の妨げになる場合もあります。むしろ、加害者が再犯をしないような根本的な取り組みが必要です」(同前)
たとえば、小さな子供にしか性衝動を得られないといった認知の歪みを修正するカウンセリングを受刑者に受けさせたり、ホルモン剤を投与して性的な衝動を抑える薬物療法もすでに行なわれているという。だが、そうした治療は当人が罪の意識を持ち、更生することを自ら望んでいることが大前提だ。
自分より力の弱い相手を力で支配できると思い込む存在に社会がどう向き合うか。この国が抱える犯罪対策の難題が改めて浮き彫りになった。
※週刊ポスト2015年2月20日号