乳製品や脂肪は体に悪いから食べない、野菜はオーガニックだけを食べる──などと、一見健康そうに思える食生活がエスカレートし、かえって健康を損ねている女性が急増しているという。
静岡県在住の主婦・宮田信子さん(仮名・50才)は、「添加物」「加工品」という言葉が大嫌い。5年ほど前に若くして親戚をがんで亡くしたことがきっかけで、自分の食生活を見直すことになった。
「農薬や添加物に発がん性物質があると聞き、食品表示ばかり気にするようになりました。何を食べるのも怖くなって、本当に信頼できるお店で買った有機栽培の野菜や穀物しか受け入れられませんでした。
当然、品数が少なく値段が高いですし、食べたいと思ったときに必ず手に入れられるわけではないんですよね。手に入らないときは諦めて、オーガニックのコーヒーやお茶だけで1日過ごすこともありました」
そんな生活を2年以上続けているうち、信子さんの体に異変が表れ始めた。それまで病気とはほとんど無縁だったが、体調を崩すことが多くなった。
「熱を出して寝込んだのは子供のとき以来でした。いつも気分がすぐれなくて、爪がすぐ割れるし、疲れやすくなった。家事もやたらと時間がかかるようになりました。最初は年齢のせいかと思ったんですが、同じ年の友人はピンピンしていて…。彼女は無類の肉好き。ああ、そういえば私、しばらく肉を食べてないなって気づいたんです」(信子さん)
このままではまずいと思った信子さんは、肉や魚を摂るようにした。最初のうちは胃が受けつけなかったが、少しずつ体を慣らしていった。
「半年くらいすると、爪が元どおりになったんです。心なしか疲れにくくなったような気もしました。やっぱり、こだわりすぎたのがよくなかったのかなって思います」(信子さん)
今、信子さんのように、健康的な食生活を送ろうとするあまり、かえって健康を損ねるケースが増えている。オールアバウト栄養管理・療養食ガイドの一政晶子さんが解説する。
「それは『オルトレキシア』と呼ばれる新型の摂食障害です。動物性食品、乳製品、砂糖、トランス脂肪酸の入ったもの、農薬を使ったもの、遺伝子を組み換えたものなど、自分が不健康だと思う食品を極端に避ける状態を指します。
最初は純粋に健康的な食事をしたいというポジティブな思いからスタートするのですが、少しずつエスカレートして、こだわりから強迫観念に変わってしまう。“不健康な食品”を食べた自分を激しく責めるようになったり、家族や友人との食事が楽しめなくなったりと、食生活に障害をきたすようになります」
※女性セブン2015年2月19日号