イスラム国による残虐テロ事件に際し、自ら安全な場所に身を置き、勇ましい言葉で国民の生命を危険に晒している張本人は安倍晋三首相だ。
「テロリストたちを絶対許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携してまいります。日本がテロに屈することは決してありません。中東への食糧、医療などの人道支援を更に拡充してまいります」
ジャーナリスト・後藤健二氏が殺害されたことを受けた声明の原稿に自ら「罪を償わせる」と書き加えて得意顔になり、海外では「安倍首相、日本の平和主義と決別し、殺害の報復を誓う」(ニューヨーク・タイムズ)と大きく報じられた。
大メディアは指摘しないが、この声明は日本政府の中東支援に関する位置付け、姿勢を大転換させて海外在留邦人の生命を危険に晒すテロリストへの極めて軽率なメッセージといえる。
「悪いのはテロリストであり、安倍政権ではない」という政権派の考えが間違っていることを証明しよう。
イスラム国は人質2人の最初の映像を公開した際、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に総額で2億ドル程度の支援をお約束します」と表明した首相のエジプトでの演説を取り上げ、「お前は自ら進んで十字軍への参加を志願した」と決めつけた。
しかし、日本はイスラム国誕生のはるか前から中東諸国に人道支援の無償資金協力やインフラ整備のための円借款を供与してきた。つまり、イスラム国対抗策というのは首相の外交パフォーマンスでしかなかった。
国際政治アナリストの菅原出(すがわら・いずる)氏が指摘する。
「イスラム国は日本人2人の人質を手にした時から利用するタイミングを考えていた。安倍首相がエジプトで前のめりの演説をしたことが、彼らに揚げ足を取るきっかけを与えた」
※週刊ポスト2015年2月20日号