サッポロホールディングスが1月末、国税当局に対して115億円の税金の返還を求めた。
税率の低い第3のビールとして販売していた糖質ゼロ・プリン体ゼロの『極ZERO』について、「製法上、第3のビールではない可能性がある」と国税当局から指摘されたのは昨年1月。
サッポロは5月製造分で販売を終了させ、7月から税率の高い発泡酒として再発売する一方、すでに販売した分について、“正しい税率”に基づいて116億円を追加納税した。
ところがサッポロは、その後の社内検証により、今年に入って「やはり第3のビールで間違いない」との確証を得たとして、延滞税1億円を除く115億円について今度は税金還付を求めたのだ。
さらにわかりにくいことに、同社はそれでも『極ZERO』を第3のビールに戻すわけではないという。同社広報室はこう説明する。
「現行の極ZEROがお客様から大きなご支持を頂いており、還付請求の結論も出ていないため、このまま発泡酒として発売を続けます。2月中旬製造分からリニューアルを行ない、新しい価値を提案し続けます」
背景には政府が企む「発泡酒・第3のビール大増税計画」があるとみられる。
実は今年、「第3」の増税実施はほぼ決まっていた。ところが昨年末に総選挙があったため、1年先送りされた経緯がある。選挙後の1月14日に閣議決定された税制改正大綱では酒税見直しの方針が盛り込まれ、来年の増税は確実な情勢だ。
具体的には、350ml缶あたりの酒税が現状で「ビール77円」「発泡酒47円」「第3のビール28円」となっているのを将来的に統一していくとし、自民党内ではすべて「55円」にする案が浮上している。
サッポロ広報室は「(第3のビールに戻さないことと増税の動きは)関係ありません」というが、ジャーナリストの永井隆氏はこう分析する。
「『極ZERO』を第3のビールに戻して値下げしても、酒税が上がればまた再値上げすることになる。それでは消費者に混乱を与えるという判断もあったのでしょう」
ライバルのキリンは『極ZERO』に学んで「国税との連絡を密にしながら」(同社幹部)、『のどごしオールライト』を商品化し、1月に発売した。アサヒも追随すると見られている。
サッポロの“一揆”は庶民の怒りの代弁かと期待させたが、どうやら酒造メーカーにとっては国税当局はどうしても怖い存在のようである。
※週刊ポスト2015年2月20日号