訴訟大国といわれる米国には1997 年から毎年開催されているユニークな大会がある。その名も「Annual Wacky Warning Labels Contest(変わった注意書きコンテスト)」。競われるのは商品に書いてある奇妙な注意書き。昨年の賞金は大賞が1000ドル(約12万円)、2等は500ドル、3等は250ドルだった。
過去の受賞作にはアイロンに書かれた「服を着たままあてないでください」、延長コードの「使用後は手を洗ってください」、金属製ルアーの「飲みこむと危険」、プリンターのインクトナーの「飲まないでください」などあまりにも“親切”すぎて思わず笑ってしまう“名作”が並んでいる。
1990 年代の米国では紙コップに入ったホットコーヒーをこぼしてやけどをした女性が、注意書きがなかったと主張して治療費などを求めた訴訟を起こし、高額の賠償金を得た。それ以降は紙コップに「熱いので注意」と書かれるようになったというエピソードがある。
実はそうした事態は今や“対岸の火事”ではないのだ…。
36才の主婦A子さんは、5才の息子にアイスを食べさせようと袋を手にしたとき、裏面に書かれていた注意書きを見て仰天した。
「“長時間持つと手が冷たくなります”と書いてあったんです。アイスを持っていたら手が冷たくなるなんて、言われなくてもわかりますよ(笑い)。それってわざわざ書かなきゃいけないことなんでしょうか? しかも、長時間持っていたらそもそもアイスが溶けちゃいますよね」
A子さんの話は決して珍しい話ではない。“注意しすぎな注意書き”が私たちの周りにはあふれている。会社員のB子さんの一日を追ってみよう。
寒くなると通勤のお供に欠かせなくなるのが使い捨てカイロ。朝、家を出る前にカイロを手にとってパッケージを裏返してみると、そこには「熱いと感じた時は使用を中止してください」と一言。貼るタイプのものには「熱すぎると感じたときは、すぐにはがしてください」とある。言われなくても熱くなったらはがしますけど…。
会社のデスクで昼食をとろうとカップスープにお湯を入れる。パッケージには「お湯を入れると熱くなります」。こうした注意書きはレトルトのパスタソースや、カレー、おかゆなどあらゆる加熱用調理品に記されている。
夕方過ぎ、B子さんは長時間パソコンを見続けた目の疲れをとろうと蒸気アイマスクを近所のコンビニで買った。箱の裏に書かれていたのは、「室温が低い場合、温かさを感じにくいことがあります」、「メイクが落ちることがあります」という注意書きだ。家に帰って夕食を作っていると包丁で指を切ってしまった。指に貼ろうとした絆創膏の箱の裏には「痛くならないように毛の流れに沿ってはがしてください」とはがし方まで丁寧に記されていた――。
どれもこれも、間違ってはいないけれど本当に必要なのかと首をかしげるような内容ばかり。大人ならいわれなくても知っている当たり前のことばかりではないか。
※女性セブン2015年2月26日号