消費増税と円安政策による物価上昇で苦しめられている国民生活に「神風」が吹き始めた。
ガソリン価格(レギュラー)は昨年夏の1リットル=160円台から120円台、家庭用の灯油(18リットル缶)は1800円台から1300円台に値下がりした。灯油の購入額が全国1位の北海道では、厳冬期の原油安は朗報だ。
「冬は1か月に300リットル以上の灯油を使う。価格が2割以上安くなったことで、去年に比べて月に数千円浮いた。通勤用のガソリン代を合わせると家計は1万円以上助かっている」(中標津市の50代サラリーマン)
物価が上がる一方で、実質賃金は18か月連続で下がるなか、月額1万円の可処分所得アップは大きい。
大都市圏でも、石油ストーブや石油ファンヒーターの売れ行きが伸びている。大手家電量販店の担当者は「電気代が高いため、石油ストーブを新規購入される家庭が増えています。売れ行きは前年比20%増です」という。
日本航空と全日本空輸は航空運賃の燃料サーチャージを大幅に引き下げた。利用者はもちろん、円安と国際情勢不安で海外旅行の不振に苦しんでいた旅行業界も一息ついた。
何より原油安は東北の被災地に大きな恩恵をもたらしている。東北最大の漁業拠点、宮城県気仙沼漁港では昨年の水揚げが震災前の8割まで回復してきた。安倍政権が復興を進めたからでも、アベノミクスが奏功したからでもない。
「漁業は燃料費がコストの3割を占める。漁港は復旧しても、昨年は燃料代が高すぎて思うように船を出せなかったが、燃料用の重油が安くなったので出漁回数が増やせる」(気仙沼漁協関係者)
漁業や農業用の重油価格は前年より3割下がっている。栃木県のイチゴ農家は、「去年は燃料費節約のためにビニールハウスの温度を下げざるを得なく、収穫量が落ちた。今年の春には収穫が増えるはず」と安堵する。
※週刊ポスト2015年2月27日号