日本サッカー協会がハビエル・アギーレ監督を解任して以降、スポーツ紙では後任候補の名前が日替わりで登場しているが、一方で解任の是非の検証はすっかり忘れられている。
協会は解任の理由を「できるだけリスクを排除する必要がある」と説明した。法廷闘争で代表活動に支障が出るのを避けたいのは理解できるが、協会幹部の任命責任をはっきりさせるためにも、アギーレ氏の八百長疑惑がシロなのかクロなのか、はっきりさせなければならない。
スペイン検察当局の告発状によると、疑惑の試合はアギーレ氏率いるスペインリーグ・サラゴサの1部残留がかかった2011年5月の最終戦。
サラゴサはレバンテに2対1で勝利し残留を決めたが、その試合の数日前、当時サラゴサ会長だったイグレシアス氏からアギーレ監督や選手ら11人の口座にそれぞれ約8万5000ユーロ(約980万円)が振り込まれていた。
金は監督ら10人が引き出しており、レバンテ側に渡った可能性がある。告発はスペインプロリーグ機構(LFP)のハビエル・テバス会長が主導し、対象者はイグレシアス氏やアギーレ氏のほか両チームで41人に及ぶ。
本誌はスペインで当時を知るサッカー関係者らに取材。そこで疑惑の核心に迫る重大な証言を得た。イグレシアス氏の古い友人は本誌取材に対し、同氏がこんな話をしたことがあると証言した。
「私は八百長をした。だがアギーレは八百長をしたことについて、『私は何も知らないことにしてください』といったんだ。アギーレは私にこうもいった。『私は1ユーロにだって関心はないが、あなたは上手くやりましたよ』と」
発言が事実なら、アギーレ氏は元会長の不正を知りながら資金移動に手を貸したことになる。昨年12月27日の会見で無実を主張する一方で、金の流れについては「司法当局に話したい」として説明しなかったが、それが理由だったのか。
疑惑の黒幕として追及されているイグレシアス氏はスペインメディアに「私は大丈夫」と語っている。その自信の理由について友人はこう語る。
「LFPのテバス会長とイグレシアスはサッカー界に入る前からの大親友。八百長疑惑が浮上した後も彼らは酒を飲む仲を続けている。テバス会長の後ろ盾があるから、イグレシアスは大きな態度でいられる」
2013年に会長に就任したテバス氏は過去の八百長疑惑を追及することでリーグの浄化をアピールしてきたが、イグレシアス氏と親密な関係にあるとすれば今後の真相解明がうやむやに終わる可能性も出てくる。
それらの証言内容を直接確認すべく、アギーレ氏およびテバス氏には携帯電話に、イグレシアス氏にはメールで連絡を入れたが、各氏とも応答はなかった。2月27日に予定されている事情聴取でアギーレ氏は何を語るか。
※週刊ポスト2015年2月27日号