「尖閣諸島への攻勢の準備か?」そう思わせるのに十分な軍事拠点を中国が尖閣近海に築こうとしている。
昨年12月22日、共同通信が配信した記事によると、中国人民解放軍は、浙江省の海岸から50キロ離れた沖合に浮かぶ島・南ジ島に新たな軍事拠点を整備中だという。南ジ島は尖閣諸島まで約300キロの場所にあり、沖縄本島より約100キロも近い。大小52の島からなる南ジ列島のうち最大の南ジ島では、すでに最新鋭のレーダー施設を設置、ヘリポートも整備中で、さらには滑走路の建設計画も浮上。
中国国防省の楊宇軍・報道官も基地建設を認めている。そのうえで「日本のメディアは推測を加え(て報道し)、地域に緊張が生まれるかのように煽っている」と述べ、当然の行動であると強調した。
「過度に緊張を煽っている」かどうかは、その軍事拠点の内容による。新軍事拠点の規模や設備はどうなるのか。アメリカで海軍戦略アドバイザーを務めており、中国軍の実情に詳しい北村淳氏はこう解説する。
「南ジ島の地形から判断すると、高台に2000m級の滑走路を建設できなくはないが、格納施設などの建設条件が悪いため、緊急用滑走路程度のものしか構築できないはず。したがって、本格的航空施設としてはヘリポートになるだろう。
また、中国軍は上海から福州にかけての東シナ海沿いに5か所の海軍拠点をもっている。南ジ島に本格的海軍施設は必要ないから、海軍基地を設置するとしても近海防御用のコルベット艦やミサイル艇の基地程度となるだろう」
となれば、レーダーとヘリポートが主要な設備ということになる。それは日本にとり、どの程度の「脅威」なのか?
「本格的な航空基地であれば尖閣諸島を含む、先島諸島に対する脅威が増すことになる。しかし、当面はレーダー基地としてスタートすると考えられるため、南ジ島基地そのものが直接、対日軍事脅威度を増す役割を果たすとは考えにくい」(北村氏)
※SAPIO2015年3月号