経団連の歴史上、初めての女性役員が誕生する。2月9日、経団連審議員会の副議長に英通信大手BTの日本法人「BTジャパン」の吉田晴乃・社長(50)が選出された。6月の定時総会を経て正式就任となる。吉田氏は英字誌『EUROBIZ JAPAN』(2013年1月号)のインタビューで、
「ジョギングの間にふと新しいアイデアが浮かぶので、忘れる前にスタッフにメールする。だから走っている時も(スマホの)ブラックベリーが手放せない」
と語るほどの仕事人間。吉田氏は慶應義塾大学文学部を卒業後、メーカー勤務などを経てカナダ人男性と国際結婚し、その後娘とともに30歳でカナダに移住。現地の通信会社に勤務した後、離婚してシングルマザーとなってニューヨークに移り住み、NTTの現地法人に就職する。
その後は会社を移りながらキャリアアップを重ね、2012年にBTジャパンの社長に上り詰めた。
「非常に明るい人です。女性活用をテーマにした講演会で、社長就任パーティと娘の高校卒業式が重なり、卒業式に出席できなかったエピソードを語っていたが、決して暗い雰囲気を漂わせなかった」(女性支援団体関係者)
榊原定征・経団連会長は「吉田氏の起用で女性登用の動きが広がることを期待したい」と会見で語った。確かに保守的な企業風土に変化は必要だが、経済ジャーナリスト・福田俊之氏は榊原氏がいうほど単純な話ではないと指摘する。
「女性の力を企業や社会が活かすことは重要ですし、吉田氏の姿勢やキャリアは注目に値します。ただし、吉田氏のようなスタイルで働く女性を量産することが、本当に目指すべき女性活用社会ではない。『モーレツサラリーマンの女性版』を作っても企業の中に多様性は生まれません。
家事・育児の負担が女性に偏らないような仕組みを作った上で、女性ならではの着想を新しいビジネスチャンスにつなげていくことが求められているのではないでしょうか」
真の女性活用はパフォーマンスでは実現しない。
※週刊ポスト2015年2月27日号