GDP(国内総生産)はすでにドルベースで日本の約2倍となった中国だが、いまだ日本抜きで中国経済は成り立たない。中国の製造業は日本企業の製品や技術が支えているといっても過言ではない。
白物家電でトップクラスの世界シェアを誇る中国の家電メーカー・ハイアールの冷蔵庫を分解してみると、特に上位機種ほど、コンプレッサーなどの基幹部品はパナソニックなど日本製が使われている。また中国で組み立てられるスマートフォン「iPhone6」は、部品の半数が日本製で構成されている。
日本製品や技術が中国で求められるように、日本人の経営哲学もまた、広く浸透している。
1978年、トウ小平から「電子技術で中国の発展に協力してほしい」と要請を受けた松下幸之助は、多くの技術協力・支援、プラント輸出、現地製造会社設立を通して中国電子産業、家電業界の発展の礎を作った。その経営哲学は多くの中国企業の経営者に影響を及ぼし、ハイアールの張瑞敏CEOも幸之助の経営理念から大きな影響を受けたことはよく知られている。
現在、中国の書店では京セラ創業者・稲盛和夫の「経営哲学本」が山積みにされている。稲盛経営塾を中国各地でも開催して「従業員を大事にする」「相手の利益を考える」「嘘をつかない」などの理念を説き、中国経営者の「利益を上げることこそ使命」といった価値観に大きな影響を与えている。昨年、ニューヨーク証券取引所に上場を果たした中国のIT企業、阿里巴巴集団(アリババ)の創業者・馬雲も稲盛塾の塾生である。
※SAPIO2015年3月号