中国チベット自治区政府は「外国勢力とダライ・ラマ集団が結託して、チベット自治区の治安を脅かしている」などとして、テロや暴力事件の防止や解決につながる重要な情報の提供者に最高30万元(約600万円)の懸賞金を支払うことを明らかにした。北京市が昨年導入した同様の制度の懸賞金(4万元)の7倍以上で、情報提供者への懸賞金としては中国の地方政府のなかでは最高額。
チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世を中心とするチベット亡命政府はダライ・ラマのチベット帰還や中国政府との対話再開など融和策を打ち出しているが、中国側はダライ・ラマ側と妥協する余地がないことを明確に示した形だ。
チベット自治区では最近、ダライ・ラマ側にひそかに情報提供し、国家の安全を危うくしたなどとして、15人の地元共産党幹部を「重大な党規律違反」などで処分している。これら15人はチベット独立を目的とした地下組織メンバーだったり、秘密の通信ルートを経由して自治区政府の機密情報を亡命政府に提供していたとされるが、名前や身分は明らかにされていない。
これ以外にも昨年1年間で45人の党幹部が同様に「重要な党規律違反」で処分されており、危機感を強めた自治区政府指導部が重要情報の通報を奨励するために多額の懸賞金の拠出を決定したとみられる。
この制度は、国内外の暴力テロ組織やメンバーがテロや暴力事件を組織、実施したり、銃器や爆発物を売買したりするなどの犯罪活動に備えるもので、事件解決の貢献度に応じて懸賞金を支払うもの。
在京のチベット関係筋によると、中国当局は2008年に区都ラサで起きた大規模暴動の再発を警戒し、チベット族の移動や集会の自由を厳しく制限。これらの政策に反対して、焼身自殺を図るチベット族の僧侶や市民が120人を超している。
中国側は外交的にもダライ・ラマ側に圧力をかけようとしており、チベット自治区に接する隣国ネパールに対して、経済支援の年間総額を現在の約1億5千万元(約30億円)から約8億元(160億円)と5倍以上の増額を明らかにするなど、「銀弾外交」を展開。
ネパールは亡命チベット人が多数住んでいるほか、中国からの亡命チベット人が必ず通る経由地であることから、国境地帯の治安を安定させ、ネパール国内での反中国的動きを封じる狙いがある。
中国側の要請に応じて、ネパールも近年、亡命チベット人によるデモや集会を厳しく取り締まるとともに、中国側から不法に越境してくるチベット人を中国に強制送還させるなどの中国寄りの対応をとっている。