京都大学名誉教授で京都女子大学客員教授の橘木俊詔(たちばなき・としあき)氏(経済学)は、「大学は教員のレジャーランドである」と指摘する。論文も書かず、大学に顔も出さないような教員への能力チェックがほぼないことを問題視してのことだ。
そんな研究も教育もしない教授を放置してきた日本の歪んだ大学システムから産み落とされたのが、「勉強しない大学生」だ。
総務省の「社会生活基本調査」によれば、日本の大学生が学業に費やす時間は大学での講義を含めて1日3.5時間ほど。小学6年生よりも短い。橘木氏はこういう。
「東京大学の研究センターが実施した全国大学生調査と、アメリカのインディアナ大学が実施した全米学生調査を比較するとその差は歴然です。
日本の大学生の講義を除いた学習時間は全体の8割以上が1週間に10時間以下で、0時間という学生も1割近くいました。一方、アメリカの大学生は全体の6割近くが週に11時間以上、2割が21時間以上勉強しているというデータです。
大学に入るまでの問題も深刻です。ある大学では入学後の1年生向け講義でbe動詞の使い方やアルファベットの書き方、分数の足し算引き算における通分から教えています。そういった講義を『リメディアル教育』といい、多くを非常勤の教員が担当しています。
学生の基礎的学力が足りないのであれば仕方ないことですが、大学内の当事者は『何のために大学があるのか』を考え直さなくてはなりません。事実上の全入時代を迎え、学問や理論よりも、社会に出てから役立つ技能を集積する場を目指すなどの方策も考えられるはずです」
※週刊ポスト2015年2月27日号