韓国企業・サムスンが三井不動産との共同事業として開発し、2003年10月に竣工した「六本木ティーキューブ」はサムスン快進撃の象徴だった。ところがサムスン電子ジャパンがその自社ビルから飯田橋のオフィスビルに移転することになったという。
韓国メディアもこの情報に注目している。中央日報は2月6日付で〈サムスンの六本木ビル売却は、業績が思わしくない日本法人の自救策として進められている〉〈ビル売却だけでなく、日本国内の人員削減も検討しているとされる〉などと報じ、その理由は業績不振の中でのコスト削減ではないかと指摘している。
サムスンは2013年にアップルを抜いてスマホの世界シェアナンバー1を獲得したが、それをピークに業績は失速。売り上げの7割を占めたスマホ事業が不振に陥った。
2014年12月期のスマホ関連部門の営業利益は前年比42%というかつてない大幅減となった。全社の営業利益(連結)も、前年の3兆6000億円から2兆5000億円へと1兆円以上も下落。日本国内でのスマホのシェアは2011年に17%を記録してから下落を続け、昨年末にはついに4%にまで落ち込んだ。投資情報提供会社のカブ知恵代表・藤井英敏氏が解説する。
「スマホが売れなくなった原因は、先進国で高性能、高機能なハイエンド商品の需要が一巡してしまったこと、そして販売台数が見込める中国を中心とした新興国で、現地の格安メーカーの台頭に押されていることにあります。
世界市場での韓国企業のライバルは日本メーカーになりますが、そもそもサムスンはじめ韓国企業が強かったのは国策的なウォン安によって価格競争力が維持できていたからです。急激な円安が進んだことで失速するのは当然といえます」
サムスンは商品そのものの魅力よりも、価格を下げるための大胆な投資戦略によってシェアを奪ってきた。マーケットが成熟した時に、「既製品より安い」こと以外の新たな魅力を生み出せずにいるのも不調の原因だ。マーケティング会社のビジネスラボ代表・大西宏氏が語る。
「日本でのスマホシェア復活のために、昨年10月に投入された『GALAXY Note Edge』は有機ELによる曲面ディスプレイを採用して高機能を謳ったが、製品のデザインやディテールに厳しい日本の消費者には受け入れられなかった。ブランドイメージを悪化させ、シェアをさらに減らす原因となってしまった」
2013年9月にアメリカで先行発売されたスマートウォッチ「Gear」は返品率が30%を超えるなど、代わりとなる稼ぎ口が見つからないまま、頼りのスマホ事業が失速してしまったわけだ。
※週刊ポスト2015年3月6日号