「ドメスティック・バイオレンス(DV)」とは必ずしも「男から女への暴力」を指す言葉ではない。
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)では、被害者を「配偶者から暴力を受けたもの」と規定している(「暴力」とは身体に対する攻撃や、心身に有害な影響を及ぼす言動を指す)。つまり、女から男への暴力も立派なDVにあたる。
しかし、日本ではそれがなかなか認知されない。
DV相談窓口は「ウィメンズ・サポート○○」といった名称が目立ち、警察などに相談しても「男でしょ、しっかりしなさい」などと取り合ってもらえないという声もある。そのため被害を受けても周囲に明かさない男性も多い。
しかし、あまり表に出ることのなかった「夫のDV被害」が、近年顕在化してきた。離婚カウンセラーなど専門家のもとには、妻に虐げられて逃げ場をなくした男たちの悲痛な叫びが寄せられている。
都内に住む50代の会社員は、10年前に再婚した妻の暴言に悩まされている。
「社宅暮らしが気にくわないのか、数年前から“あんたが無能だから給料も増えないし出世もしない”と責め立てる。
休日になると“どけ! 邪魔だ”と怒鳴られ、掃除機で思い切り足をガツンとやられます。この前は“あんたの存在は私の人生の邪魔だ”といわれてさすがにショックでした」
運送業の40代男性も、些細なことでキレると手がつけられない妻に怯えて暮らす日々だ。先日、ある出来事が大騒動になった。
「帰宅してポケットからスマホを出した拍子に、同僚がくれたお土産の饅頭の包み紙がポロッと落ちたんです。目ざとく見つけた妻が豹変し、“それ私が好きなの知ってるでしょ。なんでテメエだけ食ってんだよ”と蹴りが飛んできた。
同僚のお土産だと話しても、“包み紙だけ見せるって嫌味かよ! 不愉快だ。今すぐお前がもうひとつ持ってこい。誠意を見せろ”と怒鳴られ、まだ残っていることを祈りながら1時間かけて会社まで取りに戻りました」
※週刊ポスト2015年3月6日号