妊活休業を経て、妊娠6か月であることを公表した森三中の大島美幸(35才)。と同時に、夫で放送作家の鈴木おさむ氏(42才)もブログで自身の“妊活”を公表。大島は過去に2度の流産、子宮筋腫の手術を経験したが、自身も精子の運動率が悪く、早めにと勧められた人工授精での妊娠であることなどを赤裸々に明かし、賛否両論を呼んだ。
不妊の原因が女性だけでなく男性にもあることは昨今、少しずつ知られてきたが、実際に不妊治療に臨む男性はまだまだ少ないのが現状だ。
「不妊治療は、男女同時に始めたほうがいい。それもなるべく早く始めることです」
30年にわたり最前線で男性不妊患者の臨床にあたってきた男性不妊のスペシャリストである、獨協医科大学越谷病院・泌尿器科主任教授の岡田弘氏はそう語る。卵子老化がNHKスペシャルで取り上げられ、女性たちに衝撃を与えたのは2012年のこと。以来、卵子老化はしきりにメディアで取り上げられているが、実は精子も、「妊娠させる能力」という意味では老化すると岡田氏はいう。
「男性は射精できる限り子供が作れるという認識は大きな間違いです。男性も、35~40才を分岐点に子供ができにくくなるというデータがあります。それは子供ができていない男性に顕著です」
精子の老化に関する研究は国内外で進められている。岡田氏は不妊症外来の患者の許可を得て8000~9000人の精子の機能検査を実施。マウスの卵に精子を注入し、卵子を活性化させる能力を測った。その結果、子供がいる人たちのマウスの卵子の活性率はそれほど落ちないのに対し、子供ができない男性たちの場合は活性化率が明らかに落ちる傾向があったという。その分岐点が35才。よって、男性も生殖の曲がり角は35~45才あたりと見られるという。
かつて不妊治療は2年が節目とされたが、岡田氏は子作りを始めて1年間できなかったら、すぐに夫婦同時で不妊治療に取り組むべきだと説く。
「男女ともに生殖に向いた年齢の時は、1年間で約90数%が妊娠するといわれます。1年間子供ができなかったら、男女同時に検査をするべきです。現在のように、男性も女性も子供を持とうとする年齢が上がっている状況では半年でもいいです。なるべく早く検査を開始する方がいい。日本は子作りが遅すぎる。生物学的には、生殖年齢としてふさわしいのは10代ですから」
通常行う精液検査では、精子濃度や精子運動率などを見ることはできても、個々の精子の機能は区別できない。原因を探るためには妊娠させる能力を測る「精子機能検査」まで行う必要があると岡田氏はいう。不妊の原因も無精子症、精索静脈瘤などの造精機能障害から、精路通過障害、射精障害や性交障害までさまざまだ。
「特に最近増えているのは、マスターベーションでは出るが、セックスしても中で出ない膣内射精障害の人です。この原因となっているのが、不妊治療の時に産婦人科の先生から“この日にセックスするといいですよ”と薦められるタイミング法です。ご夫婦が互いにプレッシャーをかけ合うことで、セックスしても射精に至らなくなってしまっているのです。
これら不妊症の原因に対する治療法は、パターンによってさまざまなので一概には言えませんが、いちばん多いのは精巣の静脈に瘤ができる精索静脈瘤の手術です。まず、受診動機のハードルが極めて高く、クリニックに来ないことが問題です。男性不妊の診察は、一般内科の診察と同じで、まずお話を聞いて、精巣や陰嚢の診察を行います。このとき、精巣の超音波検査をします。精液の検査をするだけですから怖いことはありません」