映画『サムライフ』(2月28日全国順次ロードショー)は、元高校教師が「学校をつくる」という夢を追い求める青春群像劇。その原作者で、主人公のモデルとなっている長岡秀貴さん(41才)は、5年間の教師生活の後、2004年『認定NPO法人侍学園スクオーラ・今人』を開校。不登校児童の相談を受け、子供たちの心の闇と向き合ってきた。
また、映画『サムライフ』には魅力的な登場人物が配されている。その一人、居酒屋店主・コイデ役で出演しているのがマキタスポーツ(45才)。著書には『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい “父親に成る”ということ』(アスペクト)などがあり、自身も12才、7才、生まれたばかりの双子の4人の子供の父でもある。
そんな二人が、親として私たちは子供にどう向き合えばいいのかを語り合った。
長岡:マキタさんは、普段、お子さんとはどう接していらっしゃいますか?
マキタ:ぼくは聖人君子ではないので、“エゴバリバリ”に接してしまうこともあります。もちろん、愛あればこそかかわるのですが、自分の子供だからといって思う通りにはならない。
長岡:まったくその通り。ぼくは親御さんから「どうやって育てたらいいですか?」と相談を受けることが多いのですが、そんな方程式はない。子供は両親のアイデンティティーをコピーして育っていくわけですからね。でも、ひとつだけ確実に言えることは、子供年齢=親年齢ですから。子供が10才だったら、親年齢も10才。まだまだビギナーなんです。
マキタ:うちは12才の長女と、7才の次女、先日、双子の男児が生まれたのですが、長女よりは次女が、次女よりは今回の双子のほうが確実に親としてスキルアップしています。 だから長女に言うんですよ。「お前の頃は若さゆえ、至らなくて申し訳なかった」と。長女は呆れてますけどね。
長岡:ははは。それはいいですね。
マキタ:叱ると怒るは違うというけど、ぼくは腹が立った時は宣言するんです。「おれは怒っている!」って。
長岡:いいですね(笑い)。今は子供たちに媚を売っている親も多いですからね。「うちは子供と友達みたいな関係です」と言う人もいますが、親と子供は友達になれません。やっぱり親は命を張って子供を止めなきゃいけないこともある。それにね、今の日本のお父さんはまったく怒らないんですよ。
マキタ:そうなんですか。
長岡:はい、父親が怒らないから、母親が、直接的恐怖になってしまうんです。子供が壊れてしまった時に、母親は「私が過保護に育ててしまったから」というんですが、過保護で心は壊れません。だって愛情を注がれているわけですからね。問題は過干渉。例えば、「いっぱい食べると大きくなれるよ」というのが過保護だとしたら、過干渉は「いっぱい食べないと大きくなれませんよ」なんです。
過干渉で育った子は、「母親の言うことを聞かないと愛情がもらえない」と思うんです。そして、そのまま育って学校や社会になじめないと、憎悪が家族に向かってしまうことにつながる。
マキタ:うちの場合を見ても、母親ってご近所とかかわることが多いでしょ。ぼくは芸能界の仕事をしているから、周囲から特殊なように見られて、かみさんも苦労したと思うし、孤独を感じたこともあると思います。その怒りの矛先がぼくに向けられて、長女が生まれた頃は反発してけんかもよくしたけど、次女誕生あたりからは家庭を円満にするために、ぼくがサンドバッグになろうと思うようになりました。
※女性セブン2015年3月12日号