2月12日、イスラム国の電子機関紙『ダビク』が日本をターゲットにすることを宣言した。安倍首相が改めて中東諸国への「2億ドル支援」を「イスラム国との戦い」と表明してしまったことで、今度は日本に対する「テロ宣戦布告」の口実に利用されたのだ。
現在、中央省庁への見回り警備などを強化しているが、危機感をさらに強めたのが欧州で相次いだテロ事件だ。12人が死亡したフランス・パリの新聞社シャルリー・エブド襲撃事件に続き、2月14日、デンマーク・コペンハーゲンでも2人が死亡するテロ事件が発生。両事件とも、実行犯は少人数および単独犯で、テロ組織メンバーではない自国民だった。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。
「現在、テロの主流となりつつあるのが『ローンウルフ(一匹狼)・テロ』です。テロ組織を支持・信奉する個人や少人数の仲間内だけで計画。“本体”の組織とは接触せず、独自の判断でテロを実行する。
また海外の過激思想に共鳴した国内出身者が起こすテロを『ホーム・グロウン・テロ』と呼びますが、最近はこの2つの特徴を併せ持つケースが急増している」
前出の2つの事件も、このニュータイプのテロに該当する。パリの事件はフランスで生まれ育った犯人が武装組織で訓練を受けて帰国後に引き起こしたホーム・グロウン型、デンマークの事件は知人の影響で過激思想を持ったとされ、2つの特徴を併せ持ったタイプだ。
テロ組織と接点がなく前歴もない自国民であれば監視しようがなく、事前に動向を把握するのは困難を極める。いま世界の治安機関が苦悩しているのはこのためだ。
「ローンウルフ型のテロリストはどこの国にもいます。通り魔犯的な犯罪者予備軍などがイスラム過激思想に感化され、テロリストに転じるケースも増える可能性がある」(前出・黒井氏)
すでに過激派が国内潜入している可能性も否定できない。2004年、国際テロ組織「アルカイダ」メンバーのフランス人が2002年7月~2003年9月まで新潟市内に潜伏していたことが発覚した。
「偽造旅券で来日し、4回の出入国を繰り返していたが、来日からしばらくの間は存在を把握できなかった。入国目的はスリーパー(待機工作員)の育成や日本におけるネットワークの構築だったと考えられる」(公安関係者)
※週刊ポスト2015年3月6日号