昨年までならすでに大企業の就職説明会は大詰めを迎え、就活生が大学4年となる4月中には内定(内々定)が出ていたが、2016年春の卒業予定者からは3月から会社説明会が始まり、選考は8月からとなった。
そこで、年明けから短期の海外留学をさせたり、「就活塾」に通わせたりと、少しでも我が子の就職が有利になるよう協力を惜しまない親が増えているという。3月に入って就活が本格化しても、“親の支援”は収まるどころか、さらに熱を帯びてくる。トップ私大に通う大手金融機関志望の男子学生(経済学部)のケースはこうだ。
「僕のゼミは卒論が厳しい教授で、4月になると卒論テーマを決めて進捗を毎週報告しなければならないんですが、就活真っ只中でそんな余裕はない。経済学部卒の父に頼んで代筆してもらうことにしました。就活の合間を見て参考文献のリストと先輩の論文のコピーを渡して、後は任せます」
そんな息子の依頼を父親は「よし、わかった。お前は就活に集中しなさい」と引き受けたというが、時代錯誤の卒論を提出して「ゴーストライター」がバレれば卒業すら怪しくなる。
「息子のために夏休みを取る」父親もいる。中部地方の国立大3年生(法学部)の父親は、勤め先に8月上旬の有給休暇を申請した。
「息子は東京の大手企業を狙っているから、毎日のように新幹線で上京するだろう。駅までの送迎はもちろん、東京で連泊するようなら着替えを届けなければなりませんから」
だが、親の過干渉がプラスに働くとは限らない。大手食品メーカーの採用担当者は、「採用の問い合わせやスケジュール確認を、親がしてくるケースが増えている。学生の自立性に疑問が出てくるので、その時点で落とします」と語る。
『300円就活』(角川書店)の著書がある大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏もこう指摘する。
「親の干渉は、近年、企業が頭を痛めている問題です。採用期間が後ろ倒し、短縮され、そうした保護者が増えることが予想されます」
※週刊ポスト2015年3月13日号