ライフ

安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎 糞便移植の臨床研究進む

〈肥満の原因は「デブ菌」だった〉──そう報じた週刊ポスト(2015年3月6日号)の記事が大きな話題になった。“デブ菌”の正体は、食事からのエネルギー回収率が高い細菌であるとみられており、まさに「腸」の機能に関わる。だからこそ腸内環境と肥満は強い関連があると見ていい。

“デブ菌”について簡単におさらいしておこう。今年2月、アメリカの医学誌に以下のような研究論文が掲載された。

 腸内の細菌バランスを崩し大腸炎を引き起こす「クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)」を患っていた32歳の女性が、腸内環境を健全にするために、健康な人の糞便を腸内に注入する治療法を試みた。

 この女性は肥満体型の16歳の自分の娘から糞便の提供を受けた。その結果、感染症の治療には成功したが、その後なぜかどんどん太ってしまった。女性は医師の指導のもと食事制限と運動プログラムに取り組んだがやせられず、糞便移植の3年後には体重が約20kg増の80kg以上になった。

 論文はそれが肥満体型の娘の腸内細菌によるものと考えられるとし、「糞便移植には太りすぎていない提供者を選ぶことを推奨する」と結ばれている。

 他の論文でも肥満を引き起こす細菌の存在が指摘されており、本誌は感染症治療でヒトからヒトへと“伝染”し得ること、将来的には腸内細菌をコントロールすることによって肥満を解消できるようになる可能性があることを報じた。

「腸内細菌」とともにキーワードになったのが「糞便移植」という治療法だ。理化学研究所特別招聘研究員で「うんち博士」としても知られる辨野義己(べんの・よしみ)氏が解説する。

「糞便移植とは、健康な人から糞便を提供してもらい、それを水に溶かした後に大腸内視鏡やチューブ、カプセルを使って患者の腸内に移植する治療法です。ただし、どの腸内細菌がどんな働きをしているかは未解明です。腸内細菌は1000種類以上あるとされていますが7割がまだ特定されておらず、今後も研究を続けていくことが必要です」

 何にでも効くわけではないが、いくつかの病気については具体的な研究が進んでいる。そのなかでも注目されているのが安倍晋三・首相の持病であり難病指定されている「潰瘍性大腸炎」の治療への応用だ。

 すでに国内での臨床研究が始まっていて、安倍首相の主治医チームがある慶應義塾大学医学部では昨年3月から開始し、潰瘍性大腸炎に加え過敏性腸症候群、やはり難病である腸管ベーチェット病などの45人の患者に糞便移植を行なう計画だ。順天堂大学医学部も昨年7月からスタートし、潰瘍性大腸炎患者を対象として30人に移植を行なう。

※週刊ポスト2015年3月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン