中国人の消費行動は各地で話題の的だ。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。
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全国人民代表大会では、中国人観光客の外国での消費、いわゆる「爆買い」が話題となり、国の指導層から苦言と同時に「国内での消費」が呼び掛けられた。
いまや各国でこの中国人観光客の奪い合いの様相を呈しているが、目下のところ日本には追い風が吹いている。
2015年3月4日( 8時37分) にアップされた『新聞晨報』サイトには、〈中国人が旧正月にした買い物ベストテン 首位は薬品〉という記事も掲載され、その盛況ぶりが国内にも伝わっていることをうかがわせた。
一方、この動きに逆行しているのが香港である。
もともと中国人による爆買いで最も恩恵を受けていたとされるのが香港だ。だが、昨年5月、「大陸からの観光客ボイコット」の看板を掲げたデモ行進が大々的に行われたのに続き、昨年秋からの民主化デモ、座り込みによる影響により、香港を訪れる中国人観光客が激減したと考えられている。
今年の旧正月にも休みの大移動期が始まった直後から、香港の大型スーパーには「大陸からの観光客ボイコット」を目的としたデモ隊が現れ、観光客や買い出しの業者たちと小競り合いを繰り返した。
こうした事情を受けて、2015年3月4日付( 8時49分) 『星島日報』は、〈香港の1月の消費額が15%下落 SARSの影響を受けた年以来の落ち込み〉というニュースを報じた。
こうした傾向は世界が中国人観光客呼び込み合戦を続けているなかでは長引くと思われているが、若者を中心に「来なくても良い」との声も広がっているという。
昨秋から香港の路上で繰り広げられた座り込み学生とその反対派の衝突が、今度は世界の市場に場を移して展開されているとの見方もあり、結末がどこに落ち着くのか注目を集めている。