長崎県佐世保市にあるハウステンボス。H.I.S.の会長を務める澤田秀雄氏が社長に就任して以来、絶好調である。次なる澤田改革の構想をノンフィクションライターの稲泉連氏が聞き、次世代の観光産業を読み解いた。
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澤田氏は当初から月の半分をハウステンボス内のホテルで過ごし、時間さえあれば場内を歩いて改善点を見つけてきた。汚れや錆びはないか、スピーカーの音はどうか。古びた施設はリノベーションし、来場者から見えていた電線も見えなくする。クリスマスにはサンタクロースに扮して子供たちと触れ合うこともある。
今年の仮装舞踏会をテーマとした「マスカレード」の期間中も、自ら仮装してイベントにときどき参加している。お客たちと実際に接し、その声に耳を傾けるためだ。
「最初はテーマパークの本質が分からず、失敗も多かった。H.I.S.流にチケットを安くしても、イベントが中途半端だとダメなんですね。そこで百万本のバラを集めたり、イルミネーションをやったりと広さがプラスになることを選んできたんです。広さを活かすイベントは、ディズニーもUSJも真似できない。その視点が成功のカギでした」
ハウステンボスの「可能性」を確信し始めたのは、そうして入場者数が倍以上に増えていく過程のことだった。
「最初は黒字化を達成して、3、4年で辞めようと思っていたんです。でも、面白くなってきた。最初は石炭か石ころかと思っていたこの場所が、実は数百億、下手をすれば数千億は儲かる可能性すら秘めたダイヤモンドなんじゃないか、と感じるようになったんです。磨けば光る。磨き方さえ見つければ、ここにはすごいビジネスの可能性が埋まっている、と」
その「磨き方」こそが、ハウステンボスを「観光ビジネス都市」にするという構想だったわけだ。
撮影■田中麻以
※SAPIO2015年4月号