1989年6月の天安門事件の民主化運動指導者、柴玲さんが米国亡命後の1990年11月ごろ、留学先の米プリンストン大学近くの自宅で、同じく民主化指導者の遠志明氏にレイプされていたことを公開書簡で明らかにし、謝罪するよう求めている。遠氏はキリスト教の洗礼を受けて、現在は牧師を務めており、柴玲さんの言い分を否定し、「事実無根」と主張している。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
柴玲さんは天安門事件後、香港に脱出、フランスを経て米国に渡り、プリンストン大学に留学。その際、すでに同大に留学していた遠氏と知り合った。
柴さんは当時、やはり天安門事件当時の民主化指導者だった封従徳氏と夫婦だったが、プリンストン大学留学時には、封氏はパリで生活しており、別居状態で、のちに離婚した。
このため、柴さんは遠氏に急速に親しくなっていた。柴さんが主張する「レイプ事件」はこのころのことで、宿舎で一緒にいたある日の夜の出来事だったという。
しかし、これに対して、遠氏は「柴さんとは当時、親しく付き合っており、性的な関係はあったが、それは双方の合意のもとでのこと」と主張してレイプを否定しており、両者の言い分は食い違っている。
柴さんは、その後、米国人男性と結婚し、夫婦でIT関連の会社を創設し共同経営者となっている。
すでに、柴さんと遠氏は長い間、会うことはなかったが、遠氏がキリスト教の洗礼を受けて牧師になり、宗教者として活動していることに柴氏は疑問を感じ、昨年6月、遠氏と会って、1990年秋のレイプ事件の謝罪を要求したという。
遠氏は「レイプではなく合意のもと」として、柴さんの謝罪要求を拒否したことから、柴さんは自らのブログ上に「公開書簡」を掲載し、あくまでも遠氏に謝罪するよう求めている。
2人の主張はいまだに食い違っているが、すでに時効が成立していることもあって刑事罰は問えないが、民事事件として損害賠償訴訟を起こすことできるため、最終的に柴さんがどう判断するかが焦点となる。
しかし、柴さんは中国の民主化運動のヒロイン的な存在だけに、米国在住の民主化運動指導者や中国人社会に「レイプ事件」は大きな衝撃を与えており、「中国の民主化運動のイメージを悪くするもので、中国内の運動の進展そのものにも悪い影響を与える」との声が上がっている半面、「2人の名誉がかかっているだけに、真相はしっかりと糾明されるべきだ」との意見もある。