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上祐史浩氏 麻原彰晃死刑執行後の「後追い自殺」発生を危惧

 地下鉄サリン事件発生から20年。東京拘置所に収監されている教祖・麻原彰晃(松本智津夫・死刑囚)だが、「死刑執行のXデー」は着実に迫りつつある。一部の法務省関係者からは1995年5月16日に麻原を逮捕した節目の今年5月16日に、死刑執行の可能性があるとの情報も飛びだした。

 オウム事件では逃亡犯の存在が麻原の死刑執行を難しくしていたが、2011年12月31日に約17年間逃亡していた平田信が警察に出頭、翌年には菊地直子と高橋克也が相次いで逮捕され、特別指名手配されていた容疑者全員が捕まった。これで潮目が変わったと法務省関係者はいう。

 しかし、死刑執行手続きのハードルがクリアされても、実際に執行すれば想定外の事態を引き起こす懸念がある。

 オウム真理教では外報部長を務め、2007年にアレフ(2000年にオウム真理教から改称)と袂を分かった「ひかりの輪」代表の上祐史浩氏が語る。

「アレフが引き継いだ教義では、麻原は絶対の存在であり、不死身の身体を得ているとされる。これまで死刑執行が回避されてきたことも信者にすれば“尊師の超能力によるもの”と解釈されているのです。

 私の脱退後の8年間で麻原の神格化は着実に進行している。もし麻原が死刑にされれば、彼らにとってあり得ない話だけに不測の事態も起こりかねない」

 かつて麻原側近だった上祐氏が危惧するのは「後追い自殺」の発生だ。

「アレフの教義では『尊師の指示なしに殺人を行なうと地獄に堕ちる』とされるため、信者が殺人やテロに走る可能性は少ないと思う。一方、『救世主とその弟子たちが死んだ状態で共に見つかる』という麻原の予言がある。それを信じる者たちが死刑執行後、集団で後追い自殺するかもしれない」

 上祐氏が否定する「暴発」を懸念する指摘もある。

 公安調査庁の調べでは、アレフとひかりの輪を合わせた信者数は2014年11月末で約1650人。保有する現金、預貯金などの総額は約6億9000万円に達し、その大半を「本流」のアレフが占める。

 2013年に公安調査庁が公開したアレフ施設内の画像では、同庁長官や職員、警察官らを写した写真の束がナイフのようなもので串刺しになっていた。

 オウム信者の脱会支援に取り組み、1994年にはオウム真理教信者に殺害されかかった経験を持つ滝本太郎・弁護士は危機感を募らせる。

「信者らは『グルと心でつながっている』と信じ切っている。その中には精神状態が不安定な者が数十人はいると見ています。教祖を殺した日本社会はより恨まれますから、無差別テロも起こり得る」

(文中の死刑囚、受刑者、被告等の表記は略)

※週刊ポスト2015年4月3日号

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