「テレビ局から10万円もらった仲間がいる。それくらいの金額は出せるんだろ、お宅はいくら払えんの?」
「話聞きたいの? いくら?」
神奈川県・川崎市の中学1年・上村遼太君が殺害された事件で本誌記者が上村君や逮捕された少年らを知る中高生を取材しようとすると、彼らは揃ってそんなことを口にした。最初に謝礼を求めるような“情報源”に信頼できる話はないのが常識だ。お金が取材の前提ではない旨を伝えると、「じゃあ(チューハイの)『氷結』買ってこいよ」という始末。
被害者は中学1年生、主犯格だった少年は18歳、一緒に逮捕された2人も17歳という事件だっただけに、取材対象が中高生になるのは当然だ。メディアの取材攻勢の結果、加害者、被害者と関係する少年たちを囲い込むべく“札束合戦”が繰り広げられた。ブロック紙記者がこう語る。
「ウチは東京にいる記者の人数が少ないから出遅れてしまって、取材に行ったときにはすでにテレビ局が取材したあとでした。事件現場周辺にいた少年たちに話を聞こうとすると、『俺たちは○○テレビにしか話さねぇから』という。お金を受け取ったから、他には口を割らないというのです。しかし一方で、『それで、お宅はいくらくれるの?』と聞いてくる。完全に増長していますよ」
被害者が顔を「青アザ」で腫らした写真を入手すべく、カネをバラ撒いたテレビ局もあったという。
過去には1997年の神戸連続児童殺傷事件でも同様のことが起きた。当時、酒鬼薔薇聖斗を名乗る犯人の少年(当時14歳)と同じ中学校の少年はメディアの名刺を束で持ち歩き、それを見せながら「ここはいくら払ってくれた」と嘯いた。
事件現場近くに住む少年がこう口走った。
「カネをくれるどころか、タバコ1カートンしか買ってくれなかったケチなメディアがいたな。いろいろとしゃべってやったのによ」
少年同士の殺人というショッキングな事件は、子供社会の暗部を浮き彫りにすると同時に、カネとモノで子供を支配すればいいという大メディアの浅ましさを露わにした。
※週刊ポスト2015年4月3日号