「金髪で高い鼻の外国人」が登場した航空会社、「就活の残酷さ」を描いたガス会社に続き、有名企業の「CM大炎上」が起きた。
首都圏のJR駅ビルに入る商業施設を運営するルミネが3月18日にウェブ上で公開した『働く女性たちを応援するスペシャルムービー』は男性上司が主人公である女性部下の容姿をけなし、同じ職場の華やかな若手女性部下と比較して「大丈夫だよ、需要が違うんだから」と言い放つ内容で、ラストに「変わらなきゃ」という音声が流れる。
「セクハラ上司の好みに合わせてお洒落をしろ」と受け取れる約1分の動画に批判が殺到し、同社広報部は「不快な表現があった。お詫びとともに動画も削除した」と平謝りした。
CMは公開前に厳しい「チェック」がある。広告主企業から依頼を受けた代理店では完成品の納入前に法務セクションが内容を確認する。差別的な文言や公序良俗に反する表現などがチェックされる。さらに広告主企業が社内で確認を重ねる。
大手広告代理店・博報堂で企業PRを担当した経験を持つネットニュース編集者の中川淳一郎氏が語る。
「公共の場ですべての年齢の男女が目にしても問題ない内容かをチェックします。法務セクションは過去、企業にどんなクレームがあったかも把握し、マズそうなら『この表現はアウト』とはっきり指摘します」
今回のポイントは炎上した動画が「第1話」だったところにありそうだ。公開されていた第2話(現在は削除)は主人公が職場の飲み会で後輩の男性社員から容姿を褒められ動揺するという内容。
「2話目以降も続きがあり、全体としてはセクハラを是としないバランスの取れた内容だったのかもしれません。法務チェックも『全体を通してみれば問題ない』ということで通ったのでしょう」(前出・中川氏)
ルミネ広報部は公開に至るチェック体制については「回答は差し控えたい」とするのみ。さらに、「そもそも第3話以降は予定していなかった」とするが、「変わらなきゃ」といっているのに主人公が何も変わらないまま終わるのは不自然で、続きの構想があったと考えるのが自然だろう。
ネット宣伝動画はテレビCMより長く映像を流せる、続きのあるストーリーものが作りやすいといった利点がある一方、いったん批判に晒されれば、「最後まで見てもらえばわかる」という言い訳は通用しない。企業の危機管理は難しくなっている。
※週刊ポスト2015年4月10日号