東京株式市場で株価の上昇が続いている。だが、浮かれている場合ではない。企業から見ると、株価が上がるのはどう見えているのか。実は嬉しくない、という実情を大前研一氏が解説する。
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今、多くの日本企業を悩ませているのが、株の配当金の問題だ。かつて配当金は額面50円の1株あたり2円とか5円というように、額面に対して配当していた。機関投資家の影響力が弱かったからである。
また、昔は「配当性向」という言葉があった。利益の3分の1を配当に回すと、配当性向33%ということになる。これらはいずれも企業側の論理だとみなされるようになった。
今は配当性向という言葉を使ったら、株価が下がってしまう。機関投資家が額面や利益ではなく、「時価」に対して配当することを要求するからだ。つまり、投資家側の論理に沿って配当することが求められるようになったわけで、よほどの成長企業でない限りは「時価の3%」がグローバル・スタンダードになってきている。これは企業からすると、非常にしんどいことである。
にもかかわらず、現在、多くの企業は多大な犠牲を払って3%以上を維持している。なぜなら、機関投資家は3%程度の配当があれば、業績の見通しがあまり芳しくなくても「売り逃げない」からだ。
言い換えれば、今や企業から見ると、株価が上がるのは嬉しくないことなのだ。なぜなら、株価が上がれば上がるほど、配当を増やさねばならないからである。企業にとって時価の3%以上の配当を出し続けるというのは大変な重圧であり、恐怖の物語でしかないのだ。
しかも、株価が「企業が未来永劫永続した時に将来生み出すであろう富の現在価値」である以上、これから日経平均株価が2万円を突破したとしても、それは日本企業の身の丈に合っていない“偽りの相場”にほかならない。
※週刊ポスト2015年4月10日号