3月17日放送のテレビ番組で、博多大吉が過去に消費者金融から借金して生活していたことを告白し、話題となった。自ら作った借金なら納得もできるが、父が死去した後に消費者金融から父の借金返済の督促が来た場合、これを拒否することはできるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
父が死去してから5か月後に、消費者金融からの100万円の借金が発覚。先方は、3か月以内に相続人である私が相続放棄しなかったので、父親の負債を負うことになると通達してきました。でも、私は父に借金があることも相続放棄の規定も知らなかったのです。この父の負債を拒否できませんか。
【解答】
あきらめることはありません。お父さんの相続財産を売却したり、預金を使ってしまったなどの事情がなければ、相続放棄は可能です。
相続により、土地建物の不動産や預貯金、株券などの有価証券、現金、さらに家財道具などの動産を引き継ぎますが、同時に負の資産として、借金や保証債務などの債務も承継します。したがって相続人は、被相続人の債務を債権者に弁済する義務を負います。しかし、相続放棄の手続きを取ることで、債務の相続を免れます。
また、債務を相続財産の範囲でしか弁済しないという限定承認の手続きも取れます。ただ、民法では、相続開始を知ったときから、3か月以内に放棄や限定承認の手続きをすることを必要としています(第915条1項)。徒過すると、通常の相続をしたことになります。相続人が相続財産を処分したときも同様です(民法第921条)。
先方の消費者金融は、この民法の定めを盾にお父さんの借金の支払いを求めているのですが、相続放棄は可能なのです。最高裁は、被相続人との関係から相続財産の調査などが困難で、相続財産がないと信じたために、相続放棄をしなかった場合には、相続人が相続財産について認識することができた時点から、3か月を計算すべきだと判断しました。予想外の債権者などから請求を受け、初めて借金があることがわかった場合に、相続放棄を認めてもらえる可能性が十分にあります。
あなたの場合、父親に何も財産がなく、借金もないと思ったので、相続放棄などの手続きに思い至らなかったとすれば、借金がわかって3か月以内なら相続放棄できると思います。ほかに、預金などを使った場合でも、例えば葬式費用に充てたときなど、相続財産の処分にはならない場合もあります。家庭裁判所で相談してください。
※週刊ポスト2015年4月10日号