創業85年を迎える東京・渋谷の「仲屋商店」。傘の専門店である。50年以上傘の修理に携わる福田克雄さん(82)は、週に3日、朝10時から午後5時まで作業に没頭する。傘の先端を手作りの作業台の穴に突き刺し、指先でクルクルと回しながら壊れた部分を観察する。
年季の入った小型のペンチやヤットコを器用に使いながら仕上げていく鮮やかな職人芸だが、格安のビニール傘が市場を席巻すると仕事は激減していった。だが、近年はモノを大切にする風潮が戻ってきたようで、修理の依頼が増えているという。
「一番多いのは、折れた骨の修理です。雨の少ない季節は月に100本くらい。でも梅雨時や雪の季節になると、250本以上持ち込まれるので大変ですよ。愛着のあるものはいつまでも大切に使ってもらいたいです」(福田さん)
古い傘は部品が残っていないため修理が困難とされるが、キャリアの長い福田さんは古傘から部品をストックしているため、大抵の傘は修理することができるという。
撮影■江森康之
※週刊ポスト2015年4月24日号