テレビには独特のタブーがあり、民放各社がもっとも気を使うのが「スポンサー」である。一方、スポンサー問題がないNHKにも別のタブーがある。NHKではスポンサーがない代わりに、特定の企業や商品の宣伝につながらないようにするために、企業名や商品名を挙げてはいけないことになっている。
1973年の『紅白歌合戦』に出場が決定していたフォークグループ・南こうせつとかぐや姫は、「神田川」の歌詞、「二十四色のクレパス」の「クレパス」が商品名のためNHKから「クレヨン」への歌詞の変更を要請された。かぐや姫はこの要請に対し紅白出場を固辞した。
一方、2000年の紅白に出場したシンガーソングライター・aikoの曲「ボーイフレンド」の歌詞に、消波ブロックの商品名に似た「テトラポット」が出てくることが問題となった。しかし、該当の消波ブロックの正式な商品名は「テトラポッド」であり、「歌詞は別の言葉」との判断から曲は変更されず歌われた。
些細なことが明暗を分けた両者だが、公正性を求めるこの「NHKルール」は、あまりに過剰だった。
「最近では、ゲストなど外部の人間が商品名や商標名を『言ってしまった』場合には、なんとなく黙認するが、アナウンサーや局関係者には、厳格に『商品名を言ってはいけない』と徹底する使い分けをしている」(放送関係者)
テレビのタブーは、「視聴者以外の誰か」によって決められている。
※SAPIO2015年5月号