3月下旬の深夜、韓国大使館の「韓国文化院」(東京・新宿区)が放火された。韓国メディアは一斉に「極右の仕業だ」と報じ、日韓関係のさらなる悪化が懸念される中、4月10日、警視庁捜査一課により無職の近藤利一容疑者(39)が建造物損壊などの疑いで逮捕された。近藤容疑者は、なぜ暴挙に至ったのか。
放火現場は従業員通用口だった。黒い覆面を被った男がライター用オイルを撒き、火をつけ逃走する姿が防犯カメラに映っていた。韓国文化院の広報担当者が語る。
「残業していた職員が見つけてすぐ消火したので、壁の一部が黒く焦げる程度で済みました。文化院は日本の皆様に韓国文化に触れてもらうための文化交流施設。今後はセキュリティを強化します」
韓国ではほぼすべての大手メディアがこの事件を扱い、「日本政府の右傾化」やヘイトスピーチなどに絡めて報じられた。韓国大使館関係者がいう。
「4月12日にはリビアの韓国大使館が襲撃されたこともあり、国内では放火事件への関心が高い。近藤容疑者が放火よりも罪の軽い建造物損壊の疑いで逮捕されたことには本国では不満の声があがっている」
近藤容疑者は取り調べに対して容疑を否認(15日現在)。逮捕時は車中生活を送っており、住所や経歴は判然としていない。韓国では近藤容疑者を極右と報じたメディアも少なくないが、当局は彼の素性を掴めていない。
そこで警察が頼ったのが、彼の15年来の親友A氏だ。A氏がいう。
「警察が私の自宅に来たのは13日の夕方です。焦った様子で“右翼思想にどれほど傾倒していたのか?”“ネットの掲示板で人を攻撃していたか?”などと、近藤さんが活動歴の長いネトウヨだと決めつけて質問を重ねてきた。でも私が知る限り、近藤さんがネトウヨになったのはごく最近のことです」