「政治とカネの問題どう思います?」と司会者に聞かれて話し出すのは、専門家でも何でもない美人女医。
お茶の間からは「こんな意見誰だって言えるよ」との声も聞かれるが、実はテレビの「コメンテーター」には、知られざる掟があるのだ。
『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京支局長は、『週刊ポスト』2014年12月5日号でこう述べている。
「私は日本のニュース番組を見ながら、“どうしてこの人のコメントを聞かなきゃならないの?”と思うことがしょっちゅうあります。
例えば政治のニュースなら、当然政治に詳しい人に解説してほしい。芸能人は一般の視聴者と同レベルの感想を述べているだけ。もしアメリカでそういう番組を作ったら、誰も見なくなります」
日本のテレビでは当たり前となった、美人女医やママタレントが素人然として政治を語る光景が、彼の目には奇異に映るという。
しかし、民放の情報番組を手がける放送作家によると、日本では事情が真逆なのだ。
「専門的な話ばかりの番組では、視聴率が取れません。コメンテーターの役割は、むしろ専門外のことについて『一般の視聴者と同レベルの感想』を言ってくれること。
即時報道ならコメントは不要ですが、それ以外のニュースや生活情報を放送する場合、それを視聴者目線でかみ砕いてくれる話し手が必要となる。それこそがコメンテーターの役割で、求められるのは視聴者からの『共感』なんです」
※SAPIO2015年5月号