ライフ

身体に腫瘤でがんと混同も 厄介な免疫グロブリンG4関連疾患

 IgG4関連疾患は、Ig(免疫グロブリン)G4というタンパク質が関連した全身疾患で、膵臓(すいぞう)のほか胆管(たんかん)、肺や肝臓、涙腺や唾液腺、腎臓など身体のあちこちに腫瘤(しゅりゅう)ができて炎症が起こる。発症はがん年齢とほぼ同じ50~70代で、60代がピークだ。男性の発症が女性の約3倍と高い。

 東京都立駒込病院副院長で内科の神澤輝実(てるみ)部長に聞いた。

「膵がんと診断された患者を手術し、細胞を調べたところ、がんではなく特殊な膵炎だったんです。1995年に自己免疫性膵炎の概念が提唱され、その後、自己免疫性膵炎では血中のIgG4の数値が高くなることがわかりました。膵臓だけでなく、身体の様々な場所に発生した腫瘤にもIgG4を産生する細胞が多数見つかったため、我々は自己免疫性膵炎は、IgG4が関連した全身疾患であることを2003年に報告しました」

 IgG4関連疾患は、主として膵臓や涙腺、唾液腺など、身体のあちこちに腫瘤や腫れが起こる。膵臓に腫瘤ができると、肌や爪が黄色くなる黄疸(おうだん)が現われ、膵がんと混同されることもある。アメリカの調査では、膵がんで手術された例のうち、2.5%が自己免疫性膵炎だったという結果もある。

 また、この病気で左右の涙腺や唾液腺に腫瘤ができたため、眼や口が渇きシェーグレン症候群と診断されてしまうこともある。このように、腫瘤ができる場所により、別の病気と間違われることも多い。

 発症原因は不明だが、患者はアレルギーを持つ人が比較的多い。診断は画像診断のほか、一つあるいは複数の臓器に腫瘤などの病変がある、血液検査でIgG4値が135mg/dl以上あるなどを組み合わせて実施する。

 血液検査は絶対ではなく、例えば自己免疫性膵炎では85%でIgG4の数値が上がるが、膵がんでも5%数値が上がる。このため、がんと混同されて不必要な手術が行なわれたり、また、がんなのに、IgG4関連疾患と診断され、治療に遅れがでるリスクもある。

 治療はステロイドの服用が効く。2~4週間は6~8錠を服用し、その後1錠ずつ減らしていき、3か月でかなりよくなる。

「3か月で服薬を中止すると、約半数が再発するので、0.5~1錠を1~2年継続し、維持療法を行ないます。約2割ほど再発しますが、再発してもステロイドや免疫抑制剤を使用すればよくなります。全体で約半数以上の例が完治します」(神澤副院長)

 ステロイドは、長期服用すると骨が脆(もろ)くなったり、感染症を起こしやすいといった副作用もあるので、適切に服用することが大切だ。

 この病気はIgG4が直接、瘤(こぶ)を作るわけではなく、何らかの免疫反応の過程で、IgG4が大量に産生される。発症したら、IgG4関連疾患に詳しい医師の受診が必要だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2015年5月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン