公園には約10年ほど前から“安全性の問題”からさまざまなルールができており、年々その範囲が拡大傾向にある。例えば、「ボール遊びは禁止」「大声でのおしゃべり禁止」「スポーツ禁止」「遊戯禁止」など、その多くは子供に向けたものだ。また、事故防止のため遊具が撤去された公園も少なくない。鉄棒やブランコなどの遊具がなくなり、ボール遊びや友達とはしゃぐのも禁止――となると、子供たちは公園で何をすればいいのだろうか。
公園から子供たちが消えた代わりに、増えているのがシニア世代だ。それは公園に置いてある遊具にはっきりと表れている。
子供たちの遊具が減少するのと同時に「健康遊具」といわれるシニア層に向けた運動促進器が続々と増えているのだ。健康遊具とは、わきや背中のばしができる手すり、足つぼを刺激できる器具、肩回し運動ができる器具などその種類はさまざま。国土交通省が3月31日に発表した2013年度の調査結果によると、都道府県などが管理する全国約14万6000か所の公園で、3年前と比較して遊具全体の数がほぼ変わらないのに対し、健康遊具の数が28.1%も増加している。
1998年から2013年にかけて大きく数を減らした遊具は、ゆりかご型ぶらんこが14198→1864、回転塔が5526→2902。一方、大きく増えた遊具は、健康器具が5690→26362、スプリング遊具が26831→55740、複合遊具(鉄製)が7704→16225と発表されている。
実際に公園に行くと、子供の姿は少なく健康遊具を使って体操をするシニア世代の姿が目立つ。そうして起きるのが、「子供とシニア」のトラブルだ。高校生の娘がいる千葉県在住の主婦、山口博美さん(仮名・48才)は近所の公園でこんな場面に遭遇した。
「その公園には特に注意書きのようなものはなくて、夕方犬の散歩に行くと小学生くらいの子供たちが自由に遊んでいるんです。でもある日、鬼ごっこをして走り回っている子供たちに『キャーキャーうるさいから誰もいないところでやれ!』と怒鳴ったおじいちゃんがいました。またあるときはサッカーをする男の子たちに『ボールが当たったら危ないから公園でサッカーするな』とやめさせていたおじいちゃんがいたんです。これじゃあ子供が公園に来なくなるわけですよね」
静岡県在住の主婦、金本美知子さん(仮名・46才)は小学5年生の息子からこんな話を聞いた。
「天気がいいのに息子が友達と家でゲームをしていたから『せっかくいい天気なんだからみんなで外で遊んできたら?』と言ったんです。すると、『公園で遊んでいるとじーちゃん、ばーちゃんに追い出されるんだよ。友達と公園でカードゲームをしてたら子供はうるさいから来るなと言われたんだ』と言うのでびっくりしました」
そうした子供に対する苦情は、行政に向かっている。豊島区区議会議員の河野たえ子さんは、シニア世代と子供たちとの“バトル”を耳にしている。
「子供たちは『年寄りがいるんだから力任せに走っちゃダメ』『ボール投げはダメ』『木に登っちゃダメ』などと高齢者から注意されているようです。そうすると注意されるのが嫌だから、公園に行かなくなってしまうんですね。
高齢者のかたからは『今の子供たちは礼儀を知らない』『自転車ですごいスピードでつっこんでくるので転びそうになった』という話を聞きます。高齢者のかたは子供たちと“公園内で棲み分けをしている”と言いますが、小学校低学年くらいの子供たちはそんなことできませんよね」
※女性セブン2015年5月7日号